第31話劇団

 ショックのあまり、桜は呆然としていました。


 しかし、すぐに思い立ち、行動に出るのです。


『桜だけ劇に出られないのはなぜですか。桜にもチャンスをください』


 桜は先生にメールをしました。泣きながら何度もメールをしていました。


 この頃から、桜の何かが、壊れていくような音が、がらがらと響いているのを桜自身、感じていました。


『見学にきたらいいよ』


 数日後、先生からメールがきました。


 見学当日、桜は喉が痛いのをおして、いつもの稽古場に行きました。


 ところが、そこにいたのは演劇仲間のうち、数人しかいなくて、桜は拍子抜けしました。


 選ばれた人達は、すでに台詞を喋っていました。


 もう台詞も頭に入っています。


 けれど、残念ながら台詞のことは、桜の頭にありませんでした。


 ただただ圧倒されたのです、皆の演技と、先生の台本に。


 自分もこんな劇がしたい、と桜は思いました。


 喉が痛いので、桜は早く帰りました。


 劇をしよう。


 思い込んだら、止まりません。


 声優のことはもう、考えられなくなっていました。

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