第30話映像演技

 発表公演の後、すぐにあったのが映像演技の外部講座でした。


 桜は演劇仲間の一人に誘われて、他の仲間とも一緒に講座へ行きました。


 何も知識のない桜には、舞台演技と映像演技の違いがよくわかりません。


 劇と同じように一つのシーンが完成していくのを見るのは、厳かな雰囲気で、とても心地よいものでした。


 時間が経つにつれ、桜はあることに気づきました。


 演劇仲間が、次の劇の話を、桜から離れた所でしているのです。


 次の劇、それも、演劇教室の先生が持つ劇団の正式な公演でした。


 まるで高い所から落ちるような衝撃が桜の身に走りました。


 桜だけ、一人、外された……


 皆、皆、楽しそうで、桜だけが取り残され、沈んでいく……


 どうして、そんなことに。


 私のどこがダメだったんだろう。


 桜は周りが見えなくなっていることに気づきませんでした。皆の楽しそうな声を聞いていると、まるで自分が意地悪をされて、「桜がえらばれなかった劇に、私達は選ばれた!」と自慢されているように感じたのでした。


 

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