第23話東京へ

 声優になる為には、東京に行かなくてはなりません。


 でもお金も仕事もないしなあ。


 ちょっと先走った想像を、桜はいつの間にかするようになっていました。


 声優学校は一年で終わります。桜はまだまだ実力をつけられるはずだ、と思っていました。


 ですが、肝心な仕事でやはりミスばかりしています。


 この間は、年下の上司に泣きながら怒られました。


 部署が変わってからは『苛め』のような雰囲気が漂っています。


 そろそろこの仕事も難しくなってきました。東京なんて行けません。


 それでも本場の学校を見てみたいと思った桜は、東京の声優学校に体験入学をすることにしました。授業料と交通費、宿泊費、決して安い金額ではありません。


 よし! 行ってみよう!


 並々ならぬ覚悟を、桜は抱いた……、はずでした。


「あなたは帰りなさい」


 東京の先生は桜を叱りました。


「あなたみたいな人がこられては困る」


 有名な先生でした。だから桜は何が起きたか、よくわかりませんでした。


 桜は一生懸命、自己アピールをしましたが、空回りしてばかり。生徒の誰も、桜に近づこうとしません。


 帰り道、桜は強気でした。


 大丈夫、これから成長すればいいんだから、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る