第9話心の傷

 新しい町で、また友達を作ろうと意気込んでいた桜は、現実の厳しさに打ちのめされようとしていました。


 友達は、いました、初めのうちは。


 少しずつ、一人、また一人、桜から離れていきます。


 友達といても、ちっとも会話が弾まないのです。町の中学生は、皆すまして、ファッションの話や芸能人の話をします。桜は流行というものを意識しないでやってきましたし、自分は自分だと思っていました。


 ここにきて、相手に話を合わせなくてはダメなんだ、という思いに囚われました。


 なんとか楽しい話を、と、思えば思うほど緊張して挙動不審になります。


 自分は変だ。


 どうして人前で緊張してしまうのだろう。


 桜は毎日、悩みました。


 友達のことを誰かに相談したい。


 しかし家族の他に誰に相談できるでしょう。


 その家族も最近随分と変でした。


 お父さんとお母さんが喧嘩しています。


 お母さんに相談したら、疲れていたのでしょうか。


「引っ越したらすぐ友達ができると思ってた? 甘い甘い」


 この頃のお母さんは気が立っていました。


 桜の成績が悪いので、そのことも影響していたのかもしれません。


 桜は塾に通い、勉強の遅れを取り戻そうと気ばかり焦っていました。

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