第二章

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〈今からお見舞いに行くね。天音の好きなもの持ってくから〉


 校門を出てすぐに送ったそのメッセージには返信がないまま、私は天音の住む団地の前へとやってきた。


 中から出てきた子供を抱えた女性とすれ違いに、階段を上がっていく。


 近くにある公園から小さな女の子のはしゃぐ声が響いてきて、ちょっとだけ平和な気持ちを味わった。


「……」


 三〇七号室の前で立ち止まり、一度大きく深呼吸をする。


 インターホンを押し、待つこと数秒。


「はい、どちら様でしょう?」


 玄関のドアが遠慮がちに開き、おばさんが顔を覗かせた。


「あ、どうもこんにちは。あの、天音のことが気になってお見舞いに……」


 ぎこちなく告げて頭を下げる私を見て、おばさんは一気に表情を綻ばせた。


「あらあら珠美ちゃん。よく来てくれたわ」


 半開きにしていたドアをきちんと開き、中へ入るよう促してくる。

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