第二章

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 七月十日、金曜日。


 あの墓地での一件以来、瑠璃先輩からの嫌がらせは少し落ち着いている傾向にあった。


 とは言え、まったく何もなかったわけでもなく買い物に無理矢理つき合せたり――つまりは荷物持ち要員だ――、お弁当を郁代に頼んでトイレへ隠すと言ったような“日常”のいじめは当たり前のように進行していたわけだけれど。


 世界史の授業が終わって、お昼休み。


 いつものように天音と一緒にお弁当を食べながら、私は教室の入口へ注意を向けていた。


 瑠璃先輩がこの時間に教室へやってくるのは、せいぜい週に一、二回。


 大抵は郁代に用事があって来ることがほとんどだけれど、そのついでというように天音へちょっかいをだして帰ることもしばしばある。


 昨日顔をだしたばかりなので今日は来ないと思うけれど、油断はできない。


 ふぅ……という重いため息が聞こえて、私は天音の方へと意識を向けた。

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