第一章
周りに小塚先輩以外のメンバーはいない。基本的に小塚先輩一人ならばほとんど無害だ。
個人的に彼女が天音に何かしてくるというのは皆無で、あくまでも友達である瑠璃先輩に仕方なく付き合ってあげている、というスタンスの人でしかない。
「どうしたの? 固い表情してるけれど。別にわたしは何かするつもりはないから、怖がらなくても良いのに」
数歩近づいてきた小塚先輩を見つめたまま、天音が少しだけ身を引くように上体を動かした。
「先輩もこれから帰るところですか?」
天音を庇う気持ちとこの場を穏便にやり過ごそうとする使命感みたいなものを背負うつもりで、会話に応じる。
「ええ。趣味で参加している音楽のサークルがあるから、今から顔を出すつもり」
「サークル? 先輩そういうのやってたんですね」
「まぁね。別にそんな上手いわけじゃないし、みんなあくまで遊びの延長で集まってるだけの集団だけど。わたしはベースを担当しているのよ。有名なミュージシャンの曲を演奏することがほとんどだけど、たまにオリジナルの曲を誰かが創ってきて一緒にやることもあるわ」
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