第一章

 一応、答えは両方だろう。


 だけど、ばれずに済んだという割合の方が確実に大きい。


 ――結局私も、自分の保身を優先にしてるのかな……。


 自責の念のような感覚に囚われ、一気に胸の奥が苦しくなる。


 目の前にいる友人を助けたい、どうにかしてあげたいと思う気持ちを言い訳にして、自分が同じような目に遭うのだけは避けようと逃げている事実。


 今までだって、何回も同じことを考えその度に自己嫌悪に陥っているくせに。それでも、すぐまた現実に蓋をして気づかないふりをしてごまかしているんだ。


 本当に、救いようのない性格だ。


「あら、あなたたち……」


「はい?」


 考え事をしている最中に突然話しかけられ、私はハッとしたように顔を上げた。


「今帰るところ? 今日は瑠璃に捕まってなかったのね」


 すぐ側で自転車を引きながら立っていたのは、小塚先輩だった。


 ほんの一瞬、警戒して身体が強張りそうになったがすぐに状況を理解して力を抜く。

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