第一章
「気分悪くなったら遠慮しないで言ってね?」
「大丈夫。そこまで酷くないから」
微笑してそう返す友人と並ぶようにして教室を出て、多くの声が混じり合いノイズと化した音を聞きながら下駄箱まで歩く。
「そう言えば、坂下先生にあれから何か訊かれたりした?」
「え?」
靴を履き替えながら、私はふと思い出して訊ねてみる。
「坂下先生、具合悪くなった原因気にしてたでしょう? まるで私たちが隠し事しているのに気付いてるみたいなさ、変に鋭い感じしたんだよね」
「ああ……うん。でもあの後は別に何もなかったよ。すぐにベッドで休ませてくれたし、教室戻るときだって特に何だってことなかったから」
「そっか。なら良いけど」
校門へ向かいながら、胸を撫でおろす。
それからすぐに、一体何が良かったんだろうかと自分の吐いた言葉に疑問を抱いた。
先生に一昨日のことがばれずに済んで良かったのか。それとも、天音が無理に問い詰められずに済んで良かったのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます