第一章
精一杯懇願する素振りを見せながら、必死に頼み込む。
だけど。
「駄目なものは駄目。この子はちゃんとあたしが様子見とくから、あなたはもう教室に戻って」
おもむろに立ち上がった先生に肩を掴まれ、くるりと方向転換させられてしまった。
「え? あの……」
慌てて首を後ろに曲げて相手を見るも、勝気な笑みを返されてしまうだけ。
「元気な生徒は授業サボっちゃいけません。ね? 大人しく戻りなさい」
「……」
ピッタリ一秒、天音と視線が合う。
天音は自分は大丈夫だからと言うように、小さな頷きを一つ返してくるだけだった。
仕方なく私も頷いて、保健室から退室する。
「次の授業、担当の先生にはちゃんと話しておいてね」
ドアを閉める直前、坂下先生にそう告げられて軽く会釈をしておく。
「……」
できることなら、天音と二人きりで一昨日のことについて少しでも話をしたかったのが本音なのだけれど。
閉められたばかりの白いドアをしばらく見つめてから、私は諦めの気持ちと共に一人教室へと引き返していった。
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