第一章
「ひゃ……ひゃめてくだひゃい」
「は? 日本語喋りなよ」
縦に伸びた口で必死に懇願する後輩を嘲笑うようにして暫く眺めてから、先輩はもう片方の手に持っていた小石を顔の高さまで上げて見せる。
「……ねぇ、天音。ここまで歩いてきてさ、ちょっとくらいお腹空いちゃったりしてない?」
「……し、しひぇないひぇす」
固定されたままの顔をなんとか横に振ろうと天音がもがく。
「嘘。気を遣わなくても良いんだよ。あたしは心配してんの。もしお腹空いてたら可哀そうだし、良い物食べさせてあげようと――」
瑠璃先輩の腕がピクリと動いた。
直後、私は悟る。彼女が天音に何をしようとしていたのか。
そのあまりにも笑えない、えげつなさ過ぎる仕打ちの正体に。
「い、いやぁぁぁ!」
天音本人も察したのか、慌てたように身体を動かし自分に迫る危機を回避しようと暴れだす。
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