第一章

 急いでいるせいもあるのか、天音の積み上げる石はバランスが保てずに両脇からボロボロと崩れてしまう。


 それをまた拾いどうにか山にしようとするが、なかなかいまくいかない。


「ああもう、あんたってひょっとして不器用なの? そんなやり方してたらいつまで経っても終わるわけないじゃない。ちょっとその持ってる石貸してみて」


 ずっと横で見つめていた瑠璃先輩が、天音の持つひときわ小さな小石を渡すようにと手を差し出す。


「……?」


 そのとき、私は気づいた。瑠璃先輩と何かを囁き合ってからは少し距離を置いて佇んでいた郁代が、足音を忍ばせながら天音の背後へと近づいていくのを。


 そして。


「あ……はい、どうぞ――きゃ!」


 先輩へと小石を手渡すのと同時、突然郁代が天音を後ろから羽交い絞めにするようにして押さえつけた。


「ちゃんとやらない罰だからね。悪いのは天音だよ」


 動きを封じられた天音の顔を右手で掴むと、瑠璃先輩は左右から押し潰すようにして無理矢理口を開かせる。

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