第一章

「はい? それは……そうだったと思いますけど」


「うん。じゃあさ、この崩れてるの全部直して元に戻してあげましょうよ。そうすれば供養されてる赤ちゃんの霊も喜ぶんじゃないかなって思うの」


「元に? それだけで良いんですか?」


 予想に反して簡単な内容だったのか、天音がホッとしたように瑠璃先輩を見つめる。


「そう、それだけ。さすがにこんなとこで酷いことなんてしないわ。でも、これ結構時間かかると思うから気合入れてやんなさいよ。終わるまでは絶対帰さないからね」


「は、はい」


 からかうように天音のおでこへ人差し指を当てる先輩に、慌てたように頷いて石を積み始めようとする友人。


「……まさに賽の河原で石積みする子供じゃねぇかよ」


 必死に両手で石を集める天音を見つめて、庸介さんが呟いた。


 言われてみれば、そんな風に見えなくもない。元々天音は小柄な少女だ。


 後姿だけなら、中学生と間違われることもあるくらいだし。

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