第一章

 予想通りではあったけれど、やはりここへ来た目的は天音に対する嫌がらせがメインか。


 こんな場所でいったい何をしようとしているのかは不明だけど、まったくもって良い予感がしない。


 ――まさか、さすがにあんな汚い池に突き落したりはしないよね……?


 過去の行動を振り返ると否定しきれないのが怖いところだが、こんな汚水に落したりすれば見た目も匂いもごまかせるものではなくなる。


 となれば、瑠璃先輩だってそれくらいは考えているだろうし、後々自分が不利になるようなことまではしないだろう。


「ねぇ、天音。ちょっとこっちに来てくれる?」


 見せつけるようなゆっくりとした動作で、瑠璃先輩が手招きする。


「え……、な、何でですか?」


 警戒する天音は、簡単に言うことを聞くわけもない。


 躊躇するように及び腰になりながら、困ったように先輩を見つめ返す。


「もう、そんな怖がらないでよ。別に大したことしないから。ほら、早くこっち来なさいって」

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