第一章

 元々はどれくらいの高さまで積まれていたのか。


 今見るそれはほとんど崩れているようで、十五センチ程度の小石の山みたいになってしまっている。


「供養塔ってこんな形してたっけ? 何かイメージと違う気がするけど」


 猜疑心にでも駆られたような眼差しを小石の山に向けながら、郁代が言った。


「そんなのあたしに訊かれても知らないわよ。ただ、ここのこと教えてくれた爺さんがそう言ってただけでさ。ずっと昔の人が作った、石を積んでできた供養塔があるって。そこにここで死んだ赤ん坊の霊が宿っているから絶対に悪戯なんかしてはいけないぞ、なーんて言われてさ。馬鹿かってね。たかが石ころ積み上げただけのもんに、どうして霊が宿ったりなんかするのよ。大体、これどう見ても既に崩れきってんじゃんね? とっくに赤ちゃん幽霊起きちゃってんじゃないの?」


 気後れする様子もなく供養塔を指差して、鼻で笑うように言葉を吐きつける先輩。

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