第一章
「それ、何ですか?」
訝しげに首を傾げながら、郁代がそこにあるモノへと近づいていく。
「石ですよね?」
「そう。聞いたこととかない? 供養塔ってやつ」
「供養塔?」
知ってはいる。
郁代と先輩の会話を聞きながら、私は大して深くもない知識の引き出しを開きその単語の意味を思い出す。
その名の通り、死んだ者を供養するために作られる塔ではあるが、確か後ろに並ぶ墓石だって一種の供養塔だ。
だけど、この池の前にあるこれは、どう見ても墓石とは似ても似つかぬ造形をしている。
何と言うか、これを見て想像するのは――
――三途の川の石積みみたい。
死者が行くとされる三途の川。そのほとりで親より先に亡くなった子供が父母供養のために小石で塔を作ろうとする話。
まるでその話と同じようなものが、池の前に存在していた。
いつ積まれたものなのかは、墓石同様に検討もつかない。
少なくとも、つい最近誰かが作ったわけではないことだけは断言できるくらい。
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