第一章
逆に、好奇心を剥き出しにして食い付いたのは郁代だった。
「うーん、でるかどうかはわかんない。でも、ここはあんまり近づいちゃいけない所で、まして悪戯なんか絶対に駄目だって。あたしの家のすぐ近くにさ、八十過ぎの爺さんがいんのよ。それがうちのおじいちゃんと仲が良くてしょっちゅう遊びに来るんだけど、そのときにたまたま教えてもらったの。まぁ、お酒飲んでたから勝手に話してきたって感じだけど」
言って、瑠璃先輩はこちらに向けていた頭をまた池の方に戻し、それからそっと前方を――つまりは池を――指差した。
「あれ、何だと思う?」
「え? あれって……」
気を利かせてか、瑠璃先輩の隣に立つ小塚先輩がスッと身体の位置をずらす。
そのおかげで、私は池の前にあった“それ”に気がついた。
今まで小塚先輩の陰になって隠れていたため見えなかったその禍々しいモノは、この時間が止まってしまったかのような不思議な空間において、あまりにも異質なオーラを放っているように感じられた。
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