第998話 でていけあんたはお嫁さんで九尾なのじゃ
ケーキ入刀も終わり、ブーケトスも終わった。
いよいよ全ての結婚披露宴の演目は終わり、俺と加代さんのための宴は大成功の下に幕を閉じた。
とは言ったが、これだけ参加者が身内だらけの結婚式&結婚披露宴だ。
終わったと言っても、この後どうせまた皆で家で集まることになる。
結婚式場を体よく追い出されただけで、全然終わった感じがしない。むしろ、新郎新婦と客を隔てる場がなくなったおかげでよりいっそう一体感が増した感じだった。
これもまたアレよな、今回の結婚が特殊だからに違いないよな。
普通ここから、新郎新婦は結婚旅行に行ったりするもんな。
いや、最近はそんなこともないのか。よく分からないけれど。
あぁ、披露宴には呼ばなかった人を集めて、二次会に行ったりとかそういうのもあるよね。俺たちはもうなんていうか、このままダイコン邸に向かって、無礼講の大宴会だから、そういう意識が薄いだけで。
けどどうなんだろう。
やっぱり大切な日なんだし、大切な人との時間を大事にしたいような。
「あら二人とも、新婚初夜に出かけなくっていいの?」
「お前らが使ってたご自慢の軽自動車なら、丁度俺と母さんが乗ってきてるぜ」
「バカ言ってんじゃないわよ、今日くらいいいホテル取るわよね?」
「「バカなことを言わないで!!」なのじゃ!!」
アンタ達がからかったおかげでそういう空気じゃなくなったわ。
どういう意味なのーと、なのちゃんが不思議そうに首をかしげているじゃないの。ほんと、やめてくださいよこのエロ親父ども。
一気に三人も生まれるのに、まだ子供の顔が見足りないのか。
心配しなくても、そのうち作ってやるよ。末永いお付き合いになるんだから、控えてもできちゃうっちゅうねん。
はぁもう、不老不死ってたいへん。
「桜やん、加代やん、別に無理して二次会こんでもええんやで。ワイらも、ワイらで適当にやるさかい。しっぽりしてもらっても」
「デース!! 大丈夫デース!! よろしくしててくださーい!!」
「酒のたしなみはある方だが、念のために大将に連絡しておくかな」
「私も、バイト先に連絡を」
「へぇー、あのダイコンホールディングスの社長宅で二次会ね。これは面白い映像が撮れそう――いやいや、流石にそれは野暮ってものか」
「あら、ディレクターもそういう空気読まれるんですね」
「なのっ!! おいわいまだまだつづくなの!!」
「きゅるるくっ!!(特別意訳:おいしいもんいっぱいたべるで)」
元気いっぱいという感じにはしゃぐいつものメンバーたち。
これは二次会もたいへんなことになりそうだ。はたして明日は普通に仕事なのだけれども、俺はちゃんと出社することができるのだろうか。
無理ならこれから遊びに行く家の持ち主に泣きつくしかないかな。
「おーい、皆!! ちょっと最後に全員で、集合写真を撮ろうぜ!!」
「お姉ちゃん!! お兄ちゃん!! ほら、せっかくだから!!」
結婚式場を出てからそういうことを言うかね。
提案したのは前野とハクくん。いつの間に二人は仲良くなったのだろう、スマホをとりだしてこちらに向けると、早く並んで並んでと俺たちを急かす。
結婚式場の中でも一応写真は撮ったのだけれどもな。
ただ、アルバムとして編集してそれが手元に届くのには、結構な時間がかかるそうな。デジタルアルバムで見られるとは言ってはいたけれど。
まぁ、ここは前野の口車に乗っておいて正解かもしれない。
じゃぁお願いしようかと、俺たちの中で話がまとまると、ぞろぞろと結婚式場の前に列を作り始める。迷惑かなと思って、式場の中を覗き込んでみると、俺たちの式を担当してくれたスタッフさんが、いそいそと出て来た。
あ、こりゃ止められますかね、ごめんなさいと目配せしそうになったが、それは彼のサムズアップで中止となった。どんどんやってくださいとばかりの満面の笑顔。どうやらこんなことは慣れっこという感じであった。
助かります。ほんと、今日はどうもありがとうございました。
おかげさまで最後まで楽しく式を終えることができました。
会釈をすればこちらに手を振ってくれるスタッフさん。言葉にしようにもできない感謝を胸に抱きながら、俺は前野たちのほうに視線を向けた。
スタッフさんたちから俺たちの今日という日を祝う役目を引き継いだ前野とハクくん。二人は、ほら、こっちに寄って寄ってと指示を出してくる。
「ほら、加代さんと桜は主役なんだから、ちゃんと真ん中に納まって。お母さんは加代さんと並ぶと画になるからそちらに。桜さんちのお父さんとお母さんは、しゃがむのしんどそうだし後ろでいいですかね」
「コヨーテちゃんとダイコンさんは自分たちの式の予行演習だと思って。ほら、そんな恥ずかしがらなくってもいいじゃない。あっ、誰かなのちゃん捕まえててあげてくれる。シュラトさんとアリエスさんも、もう少し寄ってくれるかな」
この手のことはお手の物、ライオンディレクターたちが良い感じに指示の分からない所はフォローしてくれる。素人仕事にしては早いほうじゃないだろうか、一分も経たないうちに俺たちはすっかりと集まると、ポーズを取っていた。
さて、あとは撮影の音頭だが――。
「お姉ちゃん!! チーズの音頭お願いね!!」
「のじゃ!? ななな、なんで
「そんなの加代やんが一番この中で綺麗に映らなあかんからに決まってるやろ」
「デース!! 今日の主役はリーダーね!!」
「その通りだ。なぁ、アリエス」
「は、はい!! シュラトさま!!」
「加代ちゃん、肩の力を抜いてやればいいのよ」
「早くしてくれ加代ちゃん。ワシ、ちょっと中腰がしんどくて」
「だらしないこと言ってんじゃないよお父さん」
「だっはっは、なんだよ桜くんの家族、揃いも揃って面白いのな」
「今度、大家族モノの企画でもやりましょうか」
「なのっ!! かわかわにとってほしいなの!!」
「きゅるるーん!!(特別意訳:きゃわきゃわでおねがいします!!)」
「ほら、桜!! お前からも嫁さんにちゃんと言ってやれよ!!」
のじゃとこちらを見る加代さん。
自分がこんなことしていいのかと不安げにきょどっている。
なんていうか、結婚してもこういう小市民というか、小動物というか、小心者な所はぜんぜん変わらないのな。仕事のこととなると、いつだって強気なのに。
けど、そういう所も好きだ。
だから守ってあげたい――というより、一緒にいたいと思ってしまう。
不安げな視線に頷いて、俺は加代さんに語りかける。
言うべきことは決まっている。
「加代さん、君がやるべきだよ。今日の主役は君だから」
「……のじゃ」
「やってよ。ほら、もっと前に出て。でていけあんたは九尾さんだろ」
「……もぉっ!! だから、そういうの、ずるいのじゃぞ!!」
えぇいやけっぱち。そんな感じでぴょこりと頭から耳を、お尻から尾を出すと加代さんがポーズを決める。ブイと手を突き出すその格好は、ちょっと結婚式の最後の記念撮影に、あっているとは思えない。
けれどもこのどこまでも底抜けに脳天気で明るい、太陽のような元気九尾には、この上なく似合っているポーズのように見えた。
「ではゆくぞ!! はい――アブリャーゲ!!」
「「「「「……なんだそりゃ!!」」」」」
【連絡 最終話(第999話)は明日(8月28日土曜日19:37)更新予定です!! よろしくおねがいいたします!! m(__)m】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます