お休みくださいご主人様/今日はお休み

お休みくださいご主人様


 キヨの主人は、寝不足なのに一向に眠らない。頑として、動かないのだ。

「岩戸の中では自由にできるとはいえ、いくらなんでも寝不足がすぎますよ!」

 キヨの怒りなどどこ吹く風、主人は背を向けて、連続ドラマを見つめている。

 昔は人間が生演奏で祀ってくれたのに、近年は後継者問題等でうやむやになった。一時期は町おこしを兼ねてアイドルグループが岩戸の前で踊ったものだが、今では映像見放題の端末なるものを設置して、これで勘弁してくださいと言われる始末。

 うちのご主人様が何をしたって言うの。何もしてないけど。

 ふと見れば、主人は居眠りをしている。やっと休みだ。キヨも横になった。次は何年後かしら。





今日はお休み


 休みが続いている。ふとしたことで、足が動かなくなった。

 家から出ることはできる。買い物もできる。ただし、交通機関を利用できない。

 町内を歩き続けて、公園や林を散歩する。

 たびたび、木に寄りかかって休憩すると、文字通りだねと通りすがりの人に言われた。人と木。休むの文字と同じ。木になれるだろうか。

 木になりたい、と呟くと、人になりたい、と胸の底から声がする。人になりたい、うまく、なれない。ヒトではあっても、社会性のある人ではなかったから。

 近所で飼われている猫が通り過ぎる。ふいと塀に飛び乗って、隣町への境界を超える。

 今日は自分で決めた休みの日。猫を真似て、徒歩でこの町を出て行く。



#Twitter300字ss 再録です。

お題は休

お休みくださいご主人様…現代ファンタジー

今日はお休み…現代、ちょっと憂鬱

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