雷獣の子

雷獣の子


 雷雨の中、森に入った。薪が足りず、雨に濡れていても集めたかった。

 急に、腹の底が裏返る轟音がした。落雷と、何かの声。

 茂みの奥に、傷だらけの雷獣が転がっている。脇には雷獣の子。

 哀れだが育てられない。黙ってその場を後にした。


 村の若者が雷獣の子を拾った。

 数日後、魔物の群れが首都に出た。予言通り、魔物を倒せるという「雷獣遣い」が集められる。

 若者は連れて行かれ、数年後に遺体が戻ってきた。

 遺体の傍らには雷獣がいない。せめて生きていてくれればいい。

 もしもの話、自分ならば死ななかった、雷獣と共に生きて帰ったかもしれない。その思いは、見なかったふりをして飲み込んだ。


 その日も、薪を集めに、森に入った。折しも雷雨。

 踏み入った茂みの奥、傷だらけの雷獣が転がっている。

 雷獣はまだ息がある。うっすらと目を開けてこちらを見る。

 やめてくれ。

 私の主は私一人、私の配下も私一人だ。

 誰の下にもつかないし、誰の上にも立ちたくはない。だから、こんなに辺境に隠れている。もう二度と見つからないように。

 それなのに、何度拒否しても、雷獣は目の前に現れる。

 何度でも、魔物の群れを、共に討ちはたそうと、迫ってくる。

 繰り返される予言通りに、運命は約束を守ろうとする。

 呆然として、私はもう動けない。



第42回ヘキライお題「我が主」再録です。

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