じょうずにひいたらすぐにほどける

じょうずにひいたらすぐにほどける


「だからね、言ったじゃない」

 少女の首にリボンを巻く。ゆっくりと。サテンのリボンは光沢が上品で、薄紫の色が少女の肌によく似合った。今日の夜会に向けて、ドレスも髪型も完璧だ。

 少女はまだ話している。小さな端末を睨みつけて。端末越しの声はフラットで、少女に適当な相槌を打ち続けている。

 そうだね。うん。ああ。そうなの。へえ。

 ふと静けさを感じた。視線も。

 少女が、無音の端末を片手に、こちらに振り返っていた。通話は終了したようだ。

 視線を読んで、美容室みたいに手鏡を出し、少女に彼女の背中を見せてやる。

 見る間に、少女の顔がぐしゃりと歪んだ。

「ちょうちょにしてって、言ったじゃない!」

 ばし、と、端末が叩きつけられる。端末のフレームが歪んで、こちらはただ謝罪を繰りかえす。

「謝ってばかりね、ナニーロボットって」

 吐き捨てて、少女は端末とこちらを置いて部屋を出る。


 私にちょうちょ結びを教えなかったのは、貴方ではない。

 だから泣かなくていい。

 貴方に、執着心を持たせるために、旦那様がしていること。ちょうちょに結んだリボンの女性ばかり、コレクションする旦那様。


 私は黙って貴方の世話をするけれど、夜ごとに、貴方ではないひとのものに戻る。

 私と貴方では違うけれど、ちょうちょ結びで結ばれている。


 リボンをじょうずにひいたなら、こんなものは、すぐにほどける。


#ヘキライ 参加作品の再録http://ncode.syosetu.com/n9497dr/9/です。第13回のお題は「ちょうちょ結び」

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