第58話 プロのお仕事 その3
なおがこの集まりに参加した理由を知ったマールはその言葉にすぐに納得し、彼女の参加を快く受け入れる。
それでこのプチ社会見学だけれど、段取りとしてはまず言い出しっぺのファルアの知り合いから順にプロの仕事を見学する流れになっていた。
なので全員が揃った所で早速彼女が得意気に出発する。歩きながらファルアのすぐ後ろを歩いていたゆんが振り返って後ろのマール達に力説する。
「ファルアの分の紹介が終わったら私だからね!」
「ゆ、ゆんも乗り気だね」
「当然だよ!」
変にやる気溢れるゆんにマールは少したじろいでいた。それから少し歩いた所である事に気付いたマールは恐る恐る彼女に質問する。
「でもいいの?私がアイドルの道を選ばなくなっても」
「それは困る!困るけど……」
この質問を受けたゆんはしばらく沈黙する。少し重い時間が流れる中、マールがこの質問はするべきじゃなかったかなと軽く後悔し始めた頃、自分の中で結論が出たのか、彼女はゆっくり喋り始めた。
「い、色々見た上でアイドルしかないって思ってくれるかもだし」
「それはちょっと都合がいいんじゃなーい?」
その彼女の結論に早速ファルアがケチをつける。このツッコミにムカついたのかゆんも負けじと反論した。
「ファルアだってスポーツ選手って選択肢を選んでくれるとは限らないんだよ?」
「私はマールの意思を尊重するけどね」
ゆんのこの言葉にファルアは優等生じみた返事を返した。その返事が信じられなかったゆんは疑いの眼差しを彼女に向ける。
「本当に~?」
「勿論マールの考えがはっきりするまでは積極的にプレゼンするけどね?」
2人のやり取りを黙って聞いていたマールは何だか勝手に自分の将来を決められそうな雰囲気を感じてため息を付いた。
「お願い、私の未来は私に決めさせて……」
4人は島の中心部へと向かって歩いていく。小さな島でも街はそれなりに栄えていて、多少はビルなんかも建っていたりするので島の中では結構な都会だ。
まだ13歳の4人はあまりこの街の隅々まで知っている訳ではない。ファルアが進む先の道も他の3人にはまだ入った事のない道で、スイスイ先を歩く彼女以外の3人はおっかなびっくりでついていくのが精一杯だった。
口数少なく歩いていると先に進んでいたファルアが突然とあるビルの前で立ち止まる。
「最初に紹介するのはここだよ!」
「……占いの館?」
ビルの看板を見上げると、どうやらそこは占い師が多数在籍する占いビルのようだ。マールが興味深そうに看板の文字を読み上げていると、ファルアが元気な声で今から行くプロの人の説明をする。
「占い魔法だよ!魔法の使い方としてはメジャーだよね」
「ファルアってこう言うの詳しかったんだ。意外」
この彼女の説明を聞いたゆんが感心したように口を開く。
「詳しいって言うか親戚のお姉さんがここにいるの」
「なーんだ」
ファルアのネタばらしを聞いてゆんは納得する。それから彼女は慣れた仕草でビルに入っていく。3人は慌ててその後を追いかけた。
ファルア以外はこの占いビルに入るのも初めてだったので、色々と興味深そうにキョロキョロと周りを見回しながらビルの中を歩いていく。
ファルアは受付で何かを話してそれからみんなを先導する。行き着いた先には、不思議な雰囲気を醸し出したそれっぽい格好の占い師のおねーさんがいた。
「あ、ファルアちゃん久しぶり。お友達?」
「は、初めまして」
初めて見るプロの占い師を前にマールは緊張しながら挨拶をする。
「じゃあ何占う?やっぱり若いから恋愛相談かな?」
お客さんを連れて来てくれたと勘違いしたおねーさんが早速占いをしようと準備をし始めたので、ファルアがすぐにそれを止めようと口を開く。
「いやあの、今日は違うんです」
「ん?」
「今日は職業見学と言うか……お姉さんの仕事ぶりを見てもらおうと思って」
そう話すファルアの困った顔を見たおねーさんはすぐに事情を察して、4人を別の部屋へと案内する。
「そうなんだ。じゃあ隣の部屋で見ていてくれる?占いはまじまじと観察されるものじゃないからね」
お姉さんの言っていた隣の部屋に入ると、そこから占い師の部屋が見えるようになっていた。この部屋の存在にマールは驚いて口を開く。
「こんな部屋があったんだ」
「これ、マジックミラーですね」
隣の部屋が見える壁を見てなおはすぐのその仕組みを理解した。部屋をキョロキョロと観察していたマールはこの部屋についてファルアに尋ねる。
「どうしてこんな部屋が?」
「新人研修用とか、色々あるみたい。でも確か滅多に使われない部屋だよ」
「へぇぇ……」
言われてみれば、占い師だって新人の頃はどうやって占ったらいいか手順とかも分からないだろう。だからこんな部屋があるんだなとマールはひとり納得する。
隣の占いの部屋の音は基本聞こえないけれど、小さなスピーカーはあってそこから隣の様子が分かるようになっている。
4人が部屋の仕組みを段々理解出来たところで隣の部屋に動きがあった。
「あ、お客さん来た」
それからみんなは初めてプロの占い師の仕事を見学する。そこにあったのは生徒同士のなんちゃって占いとは違うプロの現場だった。
まず最初にお客さんから占うジャンルと基本情報を聞いて、用意されているハンドボール大の丸いクリスタルに両手をかざす。魔法で必要情報をリーディングした後はお客さんと話をしながら適切なタイミングでその情報をアドバイスとしてお客さんに提供する。
占いで分かった結果だけじゃなくて、お客さんが最も必要としている情報とお客さんが向上していける情報だけを適切に選んで話すテクニックは流石プロだと目をみはるものがあった。
この匠の話術を目にしたマールは素直に感動する。
「流石プロだね。しっかり占ってお客さんの悩みを解決しちゃった」
この感想を聞いたゆんも更に言葉を続けた。
「私達がたまにする遊びの占いとは違うね」
「占いって言うかカウンセラーみたいですね」
2人の感想を耳にしたなおもまた占い師の仕事に感銘を覚えていた。3人がそれぞれに占い師の仕事をリスペクトしているのを見たファルアはまるで自分が褒められているような感覚を覚え、ひとりでうんうんとうなずきながら悦に入っていた。
何人かの相談を終えた所で十分堪能したと言う事になり、4人はぞろぞろと観察部屋を後にする。ちょうど一休みしていたおねーさんはそれを目にして、ニコニコ笑顔で彼女達に声をかけた。
「どうだった?」
この質問に、4人を代表してマールが感謝の言葉を伝える。
「はい、色々と参考になりました」
「そ、それは良かった」
占いの館を出た4人は次の目的地へと向かう。まだひとり目が終わっただけだと言うのに、既にマールは満足げな顔をしていた。まだ紹介する人がいるファルアは今度も黙ってスタスタと道を歩いていく。
行き先が気になったマールはファルアに声をかけた。
「次はどこに行くの?」
「えーとね……。建築魔法かな」
建築と聞いた彼女はすぐにこの時思い浮かんだイメージを口にする。
「ビルとか橋とか作ってる?」
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