第7話 オープニング5:怪しい転校生

GM:さて、続いてはPC2のシーンだ。ダイスを振ってくれたまえ。

長谷部:誰かダイスを貸してくれ……。9だ。出目が腐ってやがる。

響(シーン外):登場が早すぎたんだ!


 トリ(オープニングフェイズ最後の出番)です。


 学校の放課後、長谷部は学校に転校してきたイギリス人の少女が気になっている。5月という中途半端な時期の転入、それはまるで、UGN《じぶんたち》が任務の都合で季節外れの転校転入を行うのと似た違和感だ。

 もしやFHなのではないだろうかと疑いを持った長谷部は彼女を…レベッカ・ヴァローネという転入生を監視することにした。


灰村(シーン外):あらやだストーカー?

黒山(シーン外):エンジェルハイロゥなら光の屈折とかで隠密状態になれますから、尾行に適任ですね。

響(シーン外):エグザイルの僕だって擬態ができる。つまり僕も尾行に適した人材だ。


 そのセリフ、自分のオープニングフェイズ見返してからもう一度言って。


 二年A組。黒山、響、長谷部が所属するクラス。黒山が机に突っ伏して寝息を立てているのが視界の隅で確認できるが、今の長谷部には関係のないことだ。

 日直の仕事をしながら長谷部は件の人物、レベッカ・ヴァローネの同行を監視する。

 一ヶ月ほど前にイギリスの学校から転入してきたという彼女は、薔薇のような女性であった。すらりと長い手足に白くきめ細かい肌、快晴を映したような瞳に、金色の髪を後ろでひとまとめにした姿に、転校初日は男子だけでなく女子までもが感嘆の声を漏らした。

 鋭い目つきは凛とした印象を与え、異国の人という近寄りがたさからまだちゃんと話していない同級生が多い。

 緋山舞彩はそんななか真っ先に声をかけた生徒で、舞彩を介してレベッカと他のクラスメイトとのコミュニケーションが取られている。

 現在の彼女は緋山舞彩と談笑をしているようにみえる。それを終えると緋山は黒山の元へ、レベッカは鞄を担ぎ教室を後にする。


長谷部:追いましょう。話が始まらない。

GM:助かる。


 少し悲しいが非協力的よりも協力的なプレイヤーで大変ありがたい。精進します。


 彼女は学校から出て歩き出す。スマートフォンをいじりながら駅前に向かっている。UGNの調査によると彼女の住まいは駅から離れている。


長谷部:寄り道か。今の所怪しいところがないからな…。ミスリード用のNPCか?


GM:さて、彼女が駅周辺の路地を通るところで、君には知覚で判定してもらおう。

長谷部:知覚か。達成値は9だ。

GM:では君は人混みに紛れ走り出す彼女を見逃さなかった。彼女は視界の悪い雑多な路地裏に入り、君の視界から隠れる一瞬に消えた。追いかけた君は、突然吹き付ける熱風に思わず足を止めた。

 彼女を探すと、一瞬で移動したかのように建物の屋上へ飛び移る姿が見えた。

長谷部:跳んだのか…。俺のシンドロームではアイツを追いかけられるイージーエフェクトはないな…。

黒山(シーン外):レベッカ…もしやサラマンダーとハヌマーンのクロスブリード…。

響(シーン外):メタ読みやめい。

長谷部:…よし、光速で移動して追いかけよう。エンジェルハイロゥならできる。きっと。


 ハヌマーンより早いので許可した。


GM:では君もビルの屋上へ上がり、彼女の追跡を続ける。ちょうどその時、地下から爆発音と黒い煙が駅周辺の何箇所からか上がっているのが見えた。

長谷部:黒山のオープニングのあれか。

GM:レベッカは黒煙の上がる地下への階段の一つに向かって再び跳ぶ。彼女が跳ぶ時、赤い炎と熱のこもった風が強く吹き付ける。

長谷部:やはりオーヴァードだったか。そしてなにかが起こっている地下に行ったと…。

GM:突然の爆発音や黒煙の騒ぎに紛れていたのでレベッカの地下侵入は誰にも気づかれなかったようだ。

響(市民):「うわー!逃げろー!逃げろー!」

灰村(市民):「なにこれSNSにアップしよ」


GM:というところでシーンを終えたいのだが、なにかやっておきたい演出などはあるかな?

長谷部:…。ひとまずレベッカを追いかけて地下へ入ろう。黒山とも合流できるかも知れない。

GM:わかった。ではミドルフェイズに移動しよう。


 疑念は本物であった。彼女はFHのエージェントなのか、それとも無所属のオーヴァードなのかはまだ判明していない。もしもFHのエージェントならばなんの目的があってこの街に来たのだろう。

 この騒動と、関係があるのだろうか。

 全てを確かめるため、少年は歩みを進める。


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