第35話 本当に眠れない
今日は色々とあったから、脳が興奮している。こんな日は完徹覚悟だ。たとえ、PVが増えなくてもやめない『眠れない夜はミステリーを語ろう』のコーナー。パチパチパチ。投げやりな拍手ありがとう。あれ、きみは川に帰ったんじゃないのかね。かっぱくん。
「ここでアルバイトすることになりました。ぺこりさん、よろしくお願いいたします」
お願いされても浴槽は貸さないよ。第一、きみのような妖怪が出てきたら、エッセイ・ノンフィクションでなくて、ファンタジーかホラーになってしまう。
「お皿の水はペットボトルでなんとかします。それから僕は妖怪ではなくて『生けるゆるキャラ』という扱いになりました」
そうかい。くれぐれも邪魔をしないように。
「はーい」
では、始めようか。
前々回「い」のつく作家で伊坂幸太郎さんを取り上げたが、もう一人忘れていた。乾くるみさんだ。
「可愛い名前ですね。美人の女性ですか?」
そう思うだろ。でも乾さんは男性だ。市川 尚吾という名義で評論活動を行っている。
「幻滅ですね」
そうだね。この乾くるみというペンネームはある作品に出てくる女性の名前で「ぬいぐるみ」からの変換だ。彼は『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞して作家デビューをしている。
「メフィスト賞出身なんですね」
そう、森博嗣なんかと同じなんだな。
「清涼院流水もいますね」
詳しいな。でも今日のお題とは何の関係もない。少し黙っていてくれ。
「すみません」
正直言って初期の作品にお勧めするものはない。特筆すれば、竹本健治の四大奇書の一つ、『匣の中の失落』のオマージュ本『匣の中』がなかなか文庫にならずに、おいらの気を急かしたくらいだな。
「読んでみて、どうでしたか?」
正直に言うよ。わけがわからなかった。いわゆる壁ドン本だ。
「壁に投げつけたくなる本ってことですね。元ネタの『匣の中の失落』はどうなんですか?」
実はおいら、それを読んでないんだ。最近、新装版が講談社文庫から出たので、買ってあるのだけれど、怖くて読めない。
「壁ドン本の可能性があるんですね」
正直、その可能性はある。竹本さんには一回やられているからな。
「なんです?」
『フォア・フォーズの素数』というのを読んだが全く意味がわからなかった。だがこれはミステリーというよりおいらの苦手なSFだったような気がする。売っちゃったから分からないけど。かっぱくん、話がそれた。乾くるみさんだ。
はっきり言おう、乾さんの本は『イニシエーション・ラブ』さえ読んでおけばOKだ。物足りなかったら『セカンド・ラブ』を読めばいい。似たような雰囲気を味わえる。
「ずいぶん、大雑把に切り捨てましたね」
おいら、乾さんに期待をかけていたんだが、どうも彼の頭が良すぎて、脳みそ死んでるおいらには理解不能な暗号やトリックがあってみんな壁に投げ捨てた。
「でも『イニシエーション・ラブ』は面白かったんですよね」
面白かった。
(ここからネタバレする可能性があります。『イニシエーション・ラブ』を読んでみたい方はここでさようなら)
この小説、実は何の事件も起こらないんだ。
「へ?」
普通に読めば恋愛小説として読めてしまう。そこが恐ろしいところだ。
「じゃあ、何がミステリーなんですか?」
本文はsideAとsideBにわかれている。当然読者はsideAから読み出し、次にsideBに取り掛かる。これがトリックだ。実はsideAとsideBは時系列が逆になっている。ここがミソなの。ミステリー初心者はそれに気づかずに「何これ、どこがミステリー?」ってなっちゃうんだ。おいら一体、何人もの人に、トリックを教えてあげたか。そうすると「あそこがああで、ああなったのはああだからか!」って気づいてこのミステリーの凄さを感じ取るんだ。帯の惹句の二度読みたくなるは言い得て妙だな。
「じゃあ、『セカンド・ラブ』は?」
ごめん、脳みそ死んじゃったから忘れちゃった。でも、まずまずの出来だったな。あと『スリープ』というSFがかったのも面白かった。当然内容は忘れた。
「じゃあ、この三冊がお勧めですね」
そうだね。
かっぱくん、アシスタントの能力ありそうだな。
「ありがとうございます」
今回のエピソードが受けたら正式に採用しよう。ただし、ウチの浴槽は使っちゃダメ。生臭くなるから。
「そんなあ」
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