彼岸花を植えた覚えがない場合…

 これは、誰にでも当てはまるというわけではないと思うのですが。


 現住所に来てもう何十年と経っているんですが、今年になって突然、庭に彼岸花が咲き誇りました。誰が植えたわけでもありません。鳥か何かがタネを運んだんだろう、と家人は言っております。


 私はというと、少しばかり不穏なものを感じています。


 それと言うのも、実家で父方の祖母が亡くなる一二年前にも同じように、植えてもいない彼岸花が勝手に庭で咲いたからです。


 家族は誰も、彼岸花など見たこともなく、何の植物だろうかと首を捻っていたほどでした。けれど、咲けばあの美しい花のことです、誰も気にする者はいません。たぶん今でも何の懸念も抱いていないでしょう。


 花は、祖母の死んだ年を境にもう実家には生えなくなりました。



 なぜこの話を今頃思い出したかと言えば、先に書いた通り、婚家の庭にこれが突然咲き始めたからです。結婚して、二十年以上、今までこんなことは一度もなかった。


 他に思い当たることが、あるにはあります。


 度々、幻視で見ていたイメージに関連するような気がしています。


 田舎風の一面青々とした田んぼの中に小高い丘があり、そこに白壁に囲われた大層立派なお屋敷があるのですが、そこは庭の中だけでなくこの白壁の外までが、まるで燃え立つように真っ赤な彼岸花で埋め尽くされているのです。


 けれど、実際の先祖に纏わるお話に登場するお屋敷は、菖蒲屋敷と呼ばれたらしく、これは逆に青い花のはずで、そぐわない。だから、この真っ赤な焔の屋敷が私とどういう関連を持つのかは解りません。(菖蒲ではなくアヤメの方ね、ちなみ)


 ただの偶然だと思いたいけれど、祖母とお別れをした時とまったく同じ現象が起きて、何となく不穏なものを感じているという次第です。



 婚家の家族もこの美しい花を喜んで愛でています。とても沢山生えてきて、沢山の花を咲かせてくれました。来年もまた綺麗な花を咲かせてくれるようにと、家族は剪定の後に追肥をしたりして、大事にしだしました。


 不穏な偶然は、私一人の胸に納めて不安がらせないように黙っています。

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