昔、飼っていた犬の話
長生きしました。保育園に通う時、私を乗せて母は自転車でしばらく走ったのだそうですが、その記憶は私は曖昧です。飼っていた犬の、名前はジョンといいますが、そのこは保育園に向かう母の自転車の後ろをずーっと付いて走り、送り迎えを一緒にしていたそうです。で、飼い始めた。
ジョンが死んだのは私が中学生の頃です。本当に悲しい時は涙など出ないということを教えてくれました。ただなんとなく落ち着かず、心地の悪い思いを抱えて、涙が出てきたのは一週間も経ってからと思います。
で、私はこのジョンに、「いつかまた生まれ変わって戻っておいで、」と呼びかけました。また飼うつもりでした。
しかし、環境というものは自身の自由にはなりません。いつしかウチには猫が居るようになり、ある日、駅から家へ向かう途中でしたが、大きな犬が尻尾を振りながら近付いてきた時に、ジョンだと気付いたのですが連れて帰ってはやれませんでした。
その時のジョンは、妊娠してお腹が大きかったんです。家族に反対されるのは目に見えてました。ジョンだといっても信じてもらえないに違いないし。
泣く泣く、ごめんねと謝って、そうしたら聞き分けのいい犬でしたので、さっと身を翻してどこかへ行ってしまいました。きっと次は飼ってあげられるようにするから、と念じてました。
この犬は、本当に賢い犬でした。むやみに人に吠え掛かりもしないし、さりとて不審者が居ればちゃんと唸って威嚇はします。そして、遠く聞こえてくるサイレンに合わせて、よく遠吠えをしていましたね。
夢にも現われてくれました。私は庭の片隅に愛犬の首輪を埋めてお墓の代わりにしましたが、ジョンはそこへ伏せて尻尾を振っていました。
曼荼羅のように天井一杯壁一杯に人やら獣やらが出てきた心霊現象の夜も、その曼荼羅の中にはジョンが入っていましたし。願掛けに腹筋を毎晩やり続けていたら見たんですけどもね、横向いた壁に曼荼羅、上向いた天上には巨大な赤ん坊の顔。
その後も、ジョンは猫だったり犬だったりで度々私の前に現われてくれたのですが、私は自由に動物を飼ってよい立場になどありませんので、すべてすれ違いに終わってしまいました。
それでも毎回、次はちゃんと受け入れ態勢作っておくから!と言い訳をして、彼女とは別れるのでした。いつか飼えるようになるから、そん時に来てね、お願い。
さて、婚家でも犬は飼っておりました。けど、ジョンではないのですね、それくらいは解かるのですよ。ただ、不思議なことがありまして、この犬はメリーと名付けられたのですが、私のことを格下と認識している節がありまして、思い切り舐められていたせいでしょうか、心臓発作で亡くなったしばらく後のことですが、私も同じ心臓発作のような症状で倒れこんでしまいました。
あー、メリーだ、というのは咄嗟になぜか解かりまして、そしたら嘘のように発作は止まり、あれはなんだったんだ、という感じになりました。
もう一匹、親戚が飼っていたロンという室内犬の話はどっかでしたように思います。なんというか、動物の不思議な力っていうのは本当に不思議ですね。ダンプカーが曲がり角から突如として出てきた時に、このロンは引き綱をふりほどき、自らダンプの前へ飛び込んだそうです。身代わりになったのだ、と叔母さんは信じています。
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