溺れる鯨

浅瀬で星を眺めることが好きだった。

浅瀬には餌が少ないが、泳ぐことがあまり好きではない僕は餌の少なさに目をつむりそこで暮らしていた。ただ家族の心配する声が大きくなったこともあり、結局は浅瀬を離れ大海へ繰り出すことになった。


運良く餌を捕るための群れに属せることになった。群れは主に魚で構成されている。その中に数匹、僕と同じ鯨やアザラシが属している。毎日仲間と海の中を連なって泳ぎ、餌をとる。

僕やアザラシは、休み時間には水上へ息継ぎをしに上がる。リーダーは認識してくれているが、あまり群れ全体に理解は浸透していない。群れの魚からたまに休み時間に遠くまで一緒に泳ぎに行こうと誘われるれど、僕には呼吸が必要だからと断る。未だに群れに溶け込めていないように感じる。


ある日、ここ最近の取れ高の悪さを理由に遠くの海まで遠征に行く話が出た。そのために海の底にある流れの強い大きな海流に乗るらしい。その旅路にどれほど時間がかかるのかわからない。息をとめることには自信はあるけれど永遠には続かない。だけど僕にはこの海をひとりで生きぬく自信は持てなかった。


遠征の日を迎える。前日の夜あまり眠れなかった僕は朦朧としていて、深く考える余力はなく、群れとともに、海の底へ深く深く潜っていく。

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