第81話



――手首が異様に強い。たぶん肩甲骨の稼働域が広い。そして、なによりも低い。


 斬り上げを受け止めた柄ごと弾かれ、大きくのけ反りながらオルレイウスは考えていた。



 通常、構えた姿勢から斬り上げや斬り下げ、刺突に移行するには最低でも二挙動が必要となる。

 予備動作を省略するために、さきほどまでのシクストゥスのように引手を予め脇腹につけたり、下段に構えたり、上段に構えたりということはある程度、様式化されたものだ。


 だが、大抵の《冒険者》は攻撃よりも防御を重要視する。

 彼らが生命の尊さを知っているからというより、誇りにも先立つものが要るということを知っているからだろう。


 だから、《ルエルヴァ共和国》でもっとも一般的な《戦士》の構えは左手に持った盾を前面に、右手の剣は横に流す。

 どこからどのような攻撃を仕掛けられても処理できるという汎用性が、攻撃偏重の構えには欠けがちだからだ。

 同時に、手練れになるほど己の型を持っている確率が上昇していくという矛盾も、オルは承知している。


 ちなみに強敵と刺し違えても勝利をもぎ取ろうとする、《ギレヌミア人》の多くは盾すら持っていなかった。

 だからなのかはわからないが、《ギレヌミア人》には手練れが多いし、《冒険者》の手練れには常識的でない型を好む者が多いということは聴いていた。


 だが。



「ひぐっ、ばかにするなァ!!」


 今度は涙声と共に右からの袈裟斬り。

 しかも、相変わらず刺突の構えからの変則的な攻撃。

 予測できないものを即座に無力化できるほど、今のオルの肉体は速くない。


 オルはその一撃を受け止め切れずに刃を肩に食い込ませながら転がった。

 転がると同時に、ポケットから種がばらばらとこぼれ落ちる。

 その種を踏みつけながらシクストゥスが追撃してくる。


「えぐっ、ぼくは強いッ!!」


 繰り出される言葉は段々と子ども染みているが、剣戟の威力と変則性は増している。

 幸いだったことは手首と肩に負担をかけているためか一撃間の溜めが長くなり、大きく脚を開いて腰を落としているためか追い足の速度が少しばかり落ちている。

 華麗とも言えた歩法も、今は不細工と言ってもいいぐらいだ。



 突きのための構えから高威力の斬撃を可能にしているのは手首の返しと肩甲骨の入れ方である、とオルは分析した。

 通常、二挙動かかる斬撃を、腕を伸ばす突き出しと同時に手首を返して肩甲骨ごと肩を入れて腕をひねることで一挙動にしている。

 本来ならば、腕の力で撃つ以下の威力しか出ないはずだが、実際にそれ以上の力で撃ち込まれている。


 さらには、がに股と言えるほどに開かれた脚と低い姿勢。

 そこから放たれる斬撃は、背の高くないオルの中段でぎりぎり捌けるか否かの高さ。


 低い姿勢は、戦闘において実はかなり合理的だ。

 対人戦闘においては、攻撃の始点であり、防御がおろそかにもなりがちな足元を攻撃することができ、《魔獣モンストゥルム》を相手にした場合も大概同様の効果を得られる。

 《魔獣》というだけあって、低い姿勢で活動する四足獣の姿をした種は多いし、空でも飛んでいない限り二足の種にも有効だ。


 加えて、半身の上に腰を落としたその姿勢で相対したとき、こちら側としては攻撃できる面積が非常に狭くなる。

 そして、驚くべきことにシクストゥスは、その姿勢ではありえないほど俊敏に動き、強力な攻撃を繰り出してくる。


――オルが期待した通りの結果。

 だが、なぜオルの挑発がそれほど効果を上げたのかわからないし、対処法を確立することができるかは別問題だ。


 半身に構えた姿勢と手首関節の稼働域から考えて、オルの右側からの斬撃しか来ないことも致死に到らない大きな要因だった。

 シクストゥスは常に腕を振らずに、曲げ伸ばしするだけだからだ。



 左へ左へと地面を転がり、駆けずりながら捌くというよりは逃げる。

 問題は、こんなことは狭い坑道内では不可能だということ。


 では、どうするか?


「逃げ回るぐれぇなら、降参しろォ!」

「《優良者》まで泣くぞォ!」


 それらの野次に、降参はまだできないとオルは考える。

 必要な成果をまだ得ていないのだ、と。


『業突く張りのオルレイウス。斬られてからじゃあ、遅いんだ』


 《ピュート》の囁きに、オルは相変わらず耳を貸さない。

 だが、こんなところで終わるつもりはさらさら無いとオルもまた考えている。


『全裸にならないオルレイウス。それじゃあ、《技能スキル》も育たない』


 オルだって理解しているのだ。

 この状況を即座に打開できるほどの急激な《技能》の向上は、着衣状態では期待できない。


 だが、だからこそ・・・・・挑む意味があるとオルは考えている。

 それに……。


「死んじゃえッ!!」


 その言葉と共にシクストゥスの斬撃が降りかかる。

 涙と鼻水で端正だった顔立ちは見る影もない。


 こんな状態のシクストゥス・ラインバッグが降参したぐらいで自分を許すとは、オルにはとても思えなかった。


 ならば勝つ以外に道は無い。

 そして、オルには、その方策についてわずかばかりの心当たりがある。


――生き物のようにシクストゥスの振るう剣身が動く。


 斬り上げを腰を落として避け、斬り下げは剣の腹で受けて転がった。

 予測ができないから、反応が遅くなる。

 中段に構え続けていられないために、これまで捌けていた刺突の軌道も制御できない。


 シクストゥスが正確に動いていたときと落差があり過ぎて攻撃を予測できるほどの癖も看取できない。


 それでも、動いている距離は少ないし、オルが削られた体力も多くはない。

 なにより、まだ肺が悲鳴をあげていないし、舌を回す余力がある。


「『陽の眷属。《大地ゲーア》と《雲精霊ネフェレ》の養い児たち』」

「えぐっ、なにをぶつぶつッ! また、ばかにしているのかッ!」


 右から迫る横薙ぎを、剣を縦に構えて受けて左へと飛ばされる。

 着地とともに腹部を抉ろうとする刺突を、正面からつば切羽せっぱで受け止めて後ろへと崩される。

 追撃の地を這うような斬り上げを、斜めに傾けた剣の腹で受け二の腕の肉を裂かれながらも流す――


 飛ばされようと跳び退ろうと、上半身は最小限の動きで詠唱を続けていく。

 詠唱中は呼吸が乱れる。

 乱れた呼吸と脆弱な肉体では、オルにできることは少ない。


 ただ防ぎ、避け、躱し、受け流す。

 オルに対してシクストゥスは、涙と鼻水を垂れ流しながら、不規則な連撃を繰り出し続ける。


「死んじゃえ、死んじゃえェ、死んじゃえェッ!!」

「『頭を出して、掬って、まろばせ。優しきとばりの女王よ』」


 硬質で重い響きが掌に残る中。

 冷静にただ囁くように、オルは唱え続ける。


 大きな声でなくていい。

 そして、長い《呪文》でなくていい。


「『養育者、《陽の神》の名にかけて。我が眼前の敵を倒せ』」

「なめっ――なんだよォッ!? これぇッ!!」


 一歩を踏んだシクストゥスの足の下から樫の若木がにょきりと頭を出していた。

 地面を踏み込み損ねた彼の脚は流れ、それでもなんとか若木の隣の地面に足をつける。

 そこにはツタが繁茂していて、彼の脚を支えに膝の上まで巻きついていく――


 体勢を崩したシクストゥスの剣が流れる。

 オルはそれを潜って、腋の下へと狙いを定め、初めて彼へと一撃を打ち込む。


 がんっ。


 白銀の鎧の胸で受け止められ、戻る引手がオルを斬り裂こうとする。

 頬を裂かれながら背後に倒れ込むようにして避け、オルはまた間合いをとった。

 泣き顔をぐしゃぐしゃにゆがめながら、なおシクストゥスは冷静にオルの初撃に対処していた。


「《植物魔法》?! 珍しッ!」

「大人しいと思ったら、《呪文》を唱えてたッてか?」

「こんな程度の《魔法》じゃあ、対して意味ねえだろ」


 喚声に混じるそんな声も、「なんなんだよォ!」と叫ぶシクストゥスの声も無視して、オルは間髪入れずに距離を詰め、囁き始める。


「『別れてもまた、手を繋ぐ。陽光のもと、巡り合う。絡んで、巻きつき、萌出ろ。優しきとばりの女王よ』」

「――ふぎッ!」


 シクストゥスが自分の脚に絡みついたツタを引きちぎる。

 だが、オルとてそれを黙って見逃すわけもない。

 

 力は要らない。シクストゥスがオルの剣に少々気を取られてくれるだけでいい。

 彼の背中へと回りながら、突き。

 シクストゥスは樫の若木とツタに挟みこまれて動かしにくい左足を軸に体を回して、それを払う。


 その間にもオルの《呪文》は先へと進んでいく。


「『養育者、《陽の神》の名にかけて。我が眼前の敵に絡みつけ』」


 シクストゥスがちぎったツタが、また手を繋ぎ合わすように彼の体にまとわりついていく。

 地面から新たな若木が伸び、彼の脚を打ち、彼の体勢を崩させる。


「――こんなものォ!」

「『――嵐が来ようと、立ち枯れず――』」


 オルが上段から打ち込みながら、そう囁き始めたとき、シクストゥスもまた悟ったのだろう。

 オルの剣刃を鍔で受け止めながら涙に潤んだ瞳を見開いた彼は、ぎょっという表情を晒していた。



……オルは、これまでの経験――特にレシルとの戦闘から、《植物魔法》についていくつかのことを学んでいた。

 結論を先取りしてしまえば、それは単に「実は《植物魔法》は使い勝手がいい」という一言に尽きる。


 これまで全裸で闘うことが多かったオルは、《魔法》の行使によってもたらされる結果についての考察を怠っていた。

 それは彼の与えられた《福音ギフト》の恐るべき性能と、恐るべき実力を持った彼の母親の存在感によって覆い隠されていた事実。


 《植物魔法》によって繁茂した植物は消えないという、それだけの事実。

 それは当然と言えば、当然だった。


 《大地魔法》によって変えられた地形がそのまま残るように、《植物魔法》によって生長した植物たちは別に枯れるわけでもない。

 しかしながら、その当然の事実をオルが意識したのは、レシルとの戦闘後のこと。

 ルドニスによって『亀甲縛り』になっているレシルが、強引に抜け出た《拘束魔法》の跡を見てからだった。


 そこには、オルによって繁茂させられた小さな密林が、レシル型の空洞を抱いたままに残っていたのだ。


 《拘束魔法》には種類がある。

 《炎熱魔法》にも《凍冷魔法》にも《水流魔法》にも、十大系統と呼ばれる《魔法系統》のすべてに《拘束魔法》と呼ばれるものが存在する。


 だが、中でも《植物魔法》は使われる頻度の少ない系統のひとつ。

 単純に言葉の通りに拘束しかできない上に、使用者がほとんど《ドルイド》に限られるからだ。

 しかも、植物なだけあって強度は《岩石魔法》や《大地魔法》に大きく劣る。


 人族において、ある意味で劣等な《魔法》であると考えられている系統が《植物魔法》であるらしい。


 全裸ではない時のオルレイウスが、そんな《植物魔法》を好んで行使する理由は、言うまでもなく父親であるニコラウスの影響だった。

 なにせ、実際にニコラウスの《植物魔法》によって軍勢が弾き飛ばされる光景を目にしている。


 そして、レシル型の空洞を持った小さな密林を目にしてオルは気づいた。

 《植物魔法》の効果時間と効果範囲について。


 そう、《植物魔法》はある意味で永続的・・・で、かつ無際限・・・のものなのだ、と。

 要は植物が繁茂する限り、雪だるま式に効果が増大していくのではないか、とオルは推測した。


 もちろん、《岩石魔法》や《大地魔法》においても現れた物質は消失しない。

 だが、 容積と込められる《魔力オド》――《呪文》の長さに比例関係があるとするならば。

 そして《植物魔法》が単に植物の持つ繁殖という性質を助長しているだけならば……



――単純に、効力の乏しい短い《呪文》を重ねていったとしても、こう・・なる。


「『――養育者、《陽の神》の、名にかけて。我が、眼前の、敵を吊るせ』」


 七度目の《呪文》。

 シクストゥスの両足が急激に伸びる若木によって絡みつかれて掬われて、持ち上がる。

 オルに向かって剣を伸ばしながら前のめりに倒れ込むシクストゥス・ラインバッグ。


「――ばかなッ!!」


 ツタに絡みつかれてもがく彼の首筋に、肩で息をするオルレイウスはそっと刃を添えた。

 シクストゥスの動きが止まり、泣き濡れた顔でオルを見上げる。


「失言を、……訂正、します。……あなたは、ちゃんと、強い」


 息を切らしながらオルは敗者に声をかけた。


「《憤涙》がやられたァ!!」

「いい腕してやがるッ!」

「かぁ~! まじかよッ!! っちまッたじゃねえかァ!!」


 割れんばかりの喚声と失望の声。

 その中でオルはちらりとルクレシアの姿を窺った。


 彼女は大きく見開いていた目を閉じ、腕を組んで唸っている。

 オルは彼女に十分な実力を示せたのかどうか、と考える。


 とりあえずシクストゥスはオルの足許に伏せているが、これは明らかに相性の問題だ。

 彼よりも一撃一撃の攻撃力が高い《冒険者》だったならば、オルは初撃さえ受け止められなかった可能性が高い。

 なにより、そのシクストゥスの攻撃でさえオルは完全に無力化できていたわけではなく、幾つか手傷を負わされている。


 課題はまだまだ多い。だからこそ、資料館に戻ってできるだけ情報を集めておきたい。

 そして、もうひとつ。

 ルクレシアとちゃんと会話をしなければならない。


 そう考え、シクストゥスから目を逸らしたオル。

 そして、オルを勝者とみなして称賛する《冒険者》たちの声。


 だが。


「…………認めない」


 地に伏したシクストゥスの呟き。

 オルがその姿へと視線を戻すと、彼の右手が腰の黄金に輝く腰の剣の柄を握っていた。


「――ぼくの名は、シクストゥス・ラインバッグ! この、ぼくだけが、最年少で《最上位冒険者》に名を刻むのだ!!」


 悪寒がオルの全身を包み込み、肌がひりつく。

 ほぼ同時に、《黄金刀》がその輝きを増していく。


「ぼく以上に出る杭など要らない! この、ぼくこそが、最強の《冒険者》――英雄に相応しい! ぼくを脅かす……そのようなものは、全力で叩き潰す!!」


 オルは気づいた。

 頬を流れる血が乾いていることに。

 流れる汗と新たに噴き出す冷たいはずの汗が、すでに気化して始めていることに。


 跳び退る。跳び退りながら、《呪文》を唱え始める。


「『――伸びよ、伸びよ。茂って、おおえ。夏の陽射しに、枝を広げ、土中の、根を、疾く伸ばせ。優しきとばりの、女王よ。養育者、《陽の神》の、名にかけて。我が、眼前の、敵を蔽って、離すな』……」


 が。

 シクストゥスを捕らえていたはずの木々やツタ、そして包み込もうと新しく生長した植物たちも発火する。

 彼の脚に絡みつき彼を横転させていた背の低い生木が、オルが詠唱を試みている間にも火柱へと変わる。

 シクストゥス・ラインバッグの左手が伸び、大地を掴むようにして体を起こす。


「認めよう……オイ・インモウヤロウくん。君は、この、僕の好敵手に相応しいとォ!!」


 木々を呑みこんでいく炎は《黄金刀》を携えたシクストゥスをく気配が無い。

 炭化していく樹木を蹴り倒し、シクストゥス・ラインバッグはゆっくりと立ち上がった。


「――英雄とは、不敗であるべきだ! そして、その好敵手は、常に敗れなければならない!」


 シクストゥスはそう言い放ち、《黄金刀》の鞘を左手で、柄を右手で握り直す。

 オルに向かって真正面に立った彼は、水平に寝かせた《黄金刀》を両手で捧げ持ち、オルに涙目で微笑みかける。


「逆転劇だよ! オイ・インモウヤロウくん! 英雄とは、制勝を宿命づけられているのだ! ――そして、万民はそれを待望している!!」


 いや、そうでもないらしい、とオルは思った。

 周囲を囲んでいた《冒険者》たちは、木が発火したあたりから阿鼻叫喚の渦だ。


「《憤涙》がキレたァーー!」

「焼かれるぞォ! 水路に跳び込めッ!!」

「《神器》だ!! 見るな! 眼ン玉潰れンぞ!!」


 オルとシクストゥスを取り囲んでいた人垣があっという間に消えていく。

 その逃げ足の早さにオルは密かに舌を巻いていた。


 しかし、どうするべきか。

 オルも逃げたいところだが、既にだいぶ消耗している。追われれば、逃げきれまい。

 それに、なによりも。


「おい、ずらかるぞ! ヤツはクソだ! 自分から抜かねえッつったモンを、抜こうってんだ! 相手にすることねえッ!!」」


 慌てるルクレシアの声。

 だが、オルは左手で眩い光輝を遮りながら、首を横に振った。


「イヤです」

「おまッ! なんでだッ!!」


 オルはシクストゥス・ラインバッグに相対したまま答える。


「白を白と、黒を黒と言うためだけに、僕はここにいる。――受け取ったものと見聞したものの正否を問うために《冒険者》になったのです」

「知らねえよッ!!」

「逃げることも拒絶することも簡単です。特に身の丈に合わないものは、決して受けるべきじゃない」

「だから、なんなんだよッ! なに、言ってんだよ、おまえェ!!」


 苛立つルクレシアの絶叫を背中に聞いて、オルは乾燥する唇を開いた。


「一度、決闘を受けたからには最後まで! それに、僕の力が《中級冒険者》に相応しいと示さなければ――クァルカス・カイト・レインフォートの信頼に応えられなければ、僕は僕が決めたことに背くことになる!」

「――ハァッ?!」

『ばかやろうだな、オルレイウス』


 だが、《ピュート》の言葉もルクレシアの言葉にもオルは耳を貸す気がないらしい。


「そして、」

「まだ、あンのかよッ?!」

「ルクレシアに、僕が仲間に相応しいと認めてもらわなければならない!」

「――ハァアッ??」


 オルは反省していた。

 ルクレシアはどうもオルが考えていたより聡明だったのだ、と。


 ルクレシアと会話が成立しないと考えていたことは、オルのあやまちだった。

 彼女はこの危機的な状況においても正確な状況判断ができている。


 そして、ルクレシアがオルを量ったように、自身もまたルクレシアを量っていたのだということに、オルレイウスは気がつかされた。


 なるほど、《冒険者》にとって個々の実力は仲間となる上で重要視されるべきものだ。

 だが、もっとも重要なものは信頼だったはず。


 ロスにそう諭され、ハギルもまたそう言っていた。

 信頼とは、実力の如何だけで醸成されるものではないだろう。


「――僕は、あなたのことを、もっと知りたい」

「はァッ? ――おまッ、なにッ……ハァアッ??」


 詮索家は嫌われる。

 それならば、それで結構だ。そう、オルは決めた。

 好き嫌いがはっきりしていたほうが、接しやすい。


――考えてみれば、アークリーたちと深く関わるようになったのも、秘密を知られてからだった。


 オルは、なんとなくそう考えながら、光輝の奥のシクストゥス・ラインバッグの姿に目を細めた。


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