第28話
「ガイウス、今日はちょっと調べものをしたいので、授業は休みにできませんか?」
朝。いつものようにニックを送り出したあと、僕は書斎の扉を開きながらガイウスにそう言った。
「坊ちゃん、この老僕めの体をお気遣いならば」
「うん、そういうわけでもないんですけど、ちょっと気になることがあるんです」
「このガイウスでは、教師として不足でございましょうか?」
「いや、違いますよ? ガイウスには感謝してます。でも、僕の自習の時間も必要でしょう?」
そこで、ガイウスがちょっとだけ険しい顔をする。
「坊ちゃん。いけませんぞ、まだ十だというのに! いくら前世の記憶を持っておられるとは言っても、《純潔の神》もお赦しくださらん!」
急になにを言い出すんだ、ガイウスは。
「待って、ガイウス。なにを言っているのかはよくわかりませんけど、ガイウスが想像しているようなことではないと思いますよ?」
「……ほんとうでしょうな……」
疑わしげな眼差しを向けて書斎の中まで付いて来ようとするガイウス。
僕はガイウスの腕を掴んで回れ右させると、扉を閉めた。
そして、壁際の本棚から目当ての重くて黒い皮製の背表紙の書籍を一冊引きずり出す。もうほぼ立方体の本をなんとか両腕で持って、書斎のデスクへと向かう。
表紙と裏表紙は木製のぶ厚い書籍をデスクの上にごとりと置いて、そのまま開く。
開くと針金のようなもので本が綴じられていることが良くわかる。
ページは羊皮紙製で、手書きとは思えないくらい綺麗な文字がびっしりと書かれている。
とりあえず全裸になってみる。
僕の体に《
……そうして、息を整えて耳を澄ます。
一番近くに書斎から離れていくガイウスの足音。それが伝わるこの家の軋る音。屋根の上の小鳥の鳴き声に、家の外で虫の跳ねる音。
宮城壁の向こう側の雑多な朝の喧騒も聞こえてくる。
僕は両耳を両手で覆うようにして、王宮の方向へと頭を向けた。
王宮の石壁の向こうの音はかなり籠っているけど、たくさんの人の声や足音。なにかを運んでいるのか、硬質な物が柔らかく接触したりする音が聞こえた。
そういう物音を背景に、ニックかマルクス伯父の声を探す。
ニックと《
ニックはマルクス伯父に昨夜のことを報告するだろう。
ざわざわと僕の耳に流れ込んで来る音の渦。それらのひとつひとつに耳を澄ませ、引き寄せては、遠ざける。
僕が必要のないものだと判断した音は、少しだけ遠のいて聞こえて、そのうち無視できるようになる。
まるで《
遠くの音が近くに。選んだ音が耳元で。
以前、ニックが僕の《
確か、《地獄耳》と《雑音無効》という《技能》があったはずだ。
どうやら、それらはかなり恣意性を持ったもの。
だいたい、雑音という表現がもの凄い。価値判断がそれに含まれている。
たぶんだけど、僕が雑音だと思ったものは、意識の上には上ってこないんだと思う。
じゃなきゃ、もの凄い量の音を拾える全裸になったときの僕は、始終耳栓をしてなきゃならない。
でも、そんな僕の耳も万能ではないらしい。
音の量が多すぎるし、ニックやマルクス伯父が常にお喋りしているわけもない。それに何重も石壁に隔てられれば、空気の振動だって届いて来ないだろう。
薄々、難しいだろうなとは思っていたけど。
とりあえずは盗聴を継続しながら、デスクの上に開いた本の内容に目を通してみよう。
〈ルエルヴァ年代記〉。その第三巻。
この本には、《
正直、今までは過去の戦争についてはあんまり興味がなくて流し読みしていただけだったけれど。
……昨夜の一件からは、《陽の神》に対してニックが採った塩対応と、僕の生存を否定したような発言の理由は少しもわからなかった。
だけど、ニック自身についてはいくつかの推測が立てられる。
《陽の神》の「百九年ぶり」という言葉を聞いたとき。
僕が最初に考えたことは、ニックが僕と同じように記憶を保持した転生者なのではないか、ということ。
だけど、アンリオスの言葉からそれは間違いだということがわかった。
ニックはたぶん、人族にはありえないほど長寿なんだ。
アンリオスによれば、彼ら《人馬》は百年近く隠れ潜んでいた。
だとするなら、ニックとアンリオスの再会も少なく見積もっても百年ぐらいぶりのはず。
加えてアンリオスは、ニックの容姿を見誤るわけがない、と言っていた。
僕自身の姿を見る限り、この世界での転生においても、肉体の容姿は遺伝的要素に左右されているように思える。
だから、ニックが転生者であるということはありえない。
さらに、アンリオスの「裏切り者」や「《叛逆公》」という言葉。
ニックはきっと、もともとアンリオスと同じ団体とか集団とかに所属していたんだ。
そして、もうひとつのキーワード。
《陽の神》とアンリオスの両者が言っていた、「百九年」や「百年」という時間。
《人馬》を含む《
《魔族戦争》だ。
そして、たぶんだけどニックもそれに参加していたんだ。
それも、アンリオスと同じ陣営で。
それは、つまるところ一般的に言われている、人族の敵側を意味するかもしれない。
――《
今からおおよそ千百年前から始まって百年ほど前に終結した、千年にわたる人族と《魔族》を中心とした大戦争。
さすがに千年間ずっと殺し合いだけ続けていたわけではないようだけど。そんなことならもっと早く決着がついていたはずだ。
何回もあった膠着状態――冷戦状態まで含めて、ひとくくりに《魔族戦争》と呼ばれているらしい。
人族陣営には《ルエルヴァ人》、《グリア人》、《アラシュヴァーナ人》、《ギレヌミア人》の四民族と、《エルフ》と《ドワーフ》が。
魔族陣営には《魔族》と彼らが率いる《
……とは言っても、《魔族戦争》での陣営というくくりは、かなり大雑把だったみたいだ。
単純に、そして完全に、人族と《エルフ》と《ドワーフ》対、《魔族》と《獣人》と《魔獣》という構図じゃなかった。
人族の中でも《ギレヌミア人》はどちらの陣営にもいたようだし、《グリア人》国家の中には、少数だけど魔族陣営に与していたことがある国もあるっぽい。
そんなふうに勢力が入り乱れたことが、まず疑問と言えば疑問だ。
だって、ふつうに種族間の争いなら《ギレヌミア人》も《グリア人》も協力して《魔族》と対決するだろう。
種族という感覚が、《ギレヌミア人》と《グリア人》、そのふたつの民族に限っては乏しいのだろうか?
これまで僕はそれらのことに関してあんまり深くは追及して来なかった。
だって、今は《魔族》と《獣人》は絶滅しているようだし、と。
だけど、少しばかり考えを変えざるをえない。
なにせ《人馬》が生きていたのだし、ニックは彼らと共に《魔族戦争》に参加していた疑いもある。
僕は少し黄色く変色した、羊皮紙のページの上に目を落とす。
――〈ルエルヴァ年代記〉によると、千年にも及ぶ大戦争の発端は、ひとりの英雄、というか女傑が、ひとりの《魔王》に挑んだことにあるようだ。
のちに《三英雄》と呼ばれる三人の英雄たちのうちの、もっとも年嵩の女性。
彼女は見事にその《魔王》を討ち果たして、《魔族》に苦しめられていた人族の一部を助けた。
そうして解放された人族が、ほかの《魔王》たちにも宣戦布告して《魔族戦争》は開始されたらしい。
〈ルエルヴァ年代記〉には、《魔族戦争》の開始時の背景に関する記述量は多くない。
ただ、《ラマティルトス大陸》の大部分が無慈悲な《魔族》による支配を受けていたということが書かれているだけ。
むしろ、《魔族》の無道な行為がどのようなものであったかということに、かなりの紙幅が裂かれている。
《魔族》はけっこうエグいことをしたらしい。
種族が違えば、同じように知性を持っていたとしても残酷になれるというのはこの世界の《魔族》も変わらないらしい。
つまりは《魔族戦争》というのは『種の闘争』と言うべきものなんだろう。
でも、引っかかる。
どうして、それなら《ギレヌミア人》や《グリア人》の中には魔族陣営に参加したものがいたんだ……。
……まあいい。とにかく、今はニックについてだ。
人族らしからぬ長寿。というか、百年以上前から生きているのに三十そこそこの見た目。
そして、《人馬》とかつて仲間だったというニック。
ニックは《魔族》なのか?
でも、前に各種族について調べたとき、《魔族》の特徴には灰赤色の肌というものがあった。
ニックの肌は白い。まったく違うだろう。
でも、こっちの世界の人族の寿命も、どれだけ長命だとしても百年そこそこ。
ほかの種族の多くは数百年単位で長生きらしいけど。
ニックの見た目に近いのは、あとは《エルフ》ぐらい。
でも、彼らの髪は緑色だというし、《魔族戦争》において《エルフ》が魔族陣営に協力したという話は、僕が知る限りでは無かった。
もしかしたら、ニックは複数の種族の混血……なんてことも考えられるし。
じゃあ、種族間の交配はどこまで可能なんだろう?
僕という子供がいるのだから、もちろんニックは人族と交配可能な種族の血を引いてるはず。
でも、種族間の混血という話も僕が知る限りではほぼ無い。
前に聴いた《
あとはニックは人族だけど《魔法》の作用した結果、長命になったという可能性もあるかもしれない。
でも、一般的に《魔法》は込められた《魔力量》によって効果時間が決まっている。
確かに、《魔法》で地形を変えたりすればそのままになるけど、人間の遺伝子まで操作できるのだろうか?
大抵のことはできるっていう神々の力があれば、そういう人間も存在するかもしれないけど。
ニックは《陽の神》に妙な愛され方をしているようだし。
神々のことを考慮に入れると、なんでもありえそうな気がしてくるから困りものだ。
いろいろと考えてみたけど、ニックが何者かは結局わからないまま。
ただ、ニックは《魔族戦争》に魔族陣営で参加して、さらに裏切ったことは確実だと思う。
僕はさらに〈ルエルヴァ年代記〉のページをめくる。
もちろん、この辞書よりもぶ厚い本でも千年間の出来事が克明に記録されているわけではない。
でも僕が知りたいところはそこではないから構わない。
なぜ戦争が起こって、どうして対立が千年も続いて、どのようにして決着したのか。
そして、どこかにニックの手掛かりがないか、ということ。
もともと魔族陣営に与していたなら、ニックは間違いなく《魔族》か《獣人》の関係者のはず。
でも、裏切ったということは、それらと距離を置く必要があったとか、反目したとかいうことじゃないか?
僕はいくつかの単語を探して文字をひたすら追っていく。ページをどんどんめくっていく。
たとえば、《陽の神》の関与とか、《人馬》の関係者とか、もしくは《ドルイド》や《
ニックと《陽の神》の対話が「百九年ぶり」ということは、《魔族戦争》の終結と同時期にニックは《陽の神》との対話をやめたはず。
そのふたつには関連がありそうな気がする。
《人馬》のアンリオスの「裏切り者」という言葉も気にかかる。
ニックの裏切り行為がどのようなもので、なぜ行われたのか?
いつのまにかぶ厚い本も終わりのほうに来ていた。
終戦間際のこと。
このあたりについては少し注意して、読んでいく必要がある。
――終戦の英雄、《デモニアクス》の登場。
それは、最後の一番長かった冷戦期間の終わり。
そのころ人族陣営は、半数以上の古くから存在した《魔王》を討ち果たすことに成功していた。
と言っても、《ラマティルトス大陸》の半ば以上に《魔獣》が
《魔獣》の繁殖力は人族のそれを遥かに凌駕する。
長命の種族はその能力が弱く、人族と《魔獣種》以外の参戦種族の数は長引いた戦争の結果、大きく減っていたようだ。
《魔族》の数は減っていても、《魔獣》は冷戦期間にも数を増やしていき、人族は《獣人》や《魔族》にまでなかなか手が出せない状態にあった。
そんなとき、ひとりの《
それが《魔族戦争》における、最後にして最高の英雄。
のちに《デモニアクス》という名で知られるようになる赤子。
赤ん坊のころに《福音持ち》が発見されて、早々に《ルエルヴァ神官団》に保護された事例は初めてだったらしい。
百年以上前はまだ赤ん坊が《洗礼》を受けることは少なかった。
だけど、《デモニアクス》は早々に発見されて、しかも幼少時から訓練を受ける。
英才教育を施された彼は、成年に達するや戦線へと投入された。
彼の行く手に敵は無かった。
《魔族》に率いられた《魔獣》の大群も、兵を率いた彼の前には無力だった。
彼に与えられた《
《デモニアクス》の前に立った《魔族》・《魔獣》・《獣人》のすべてが弱体化を強要され、彼に従う兵士たちは強化された。
次第に《大陸》の中央から北方の細長い領域へと追い詰められていく《魔族》と《獣人》は、戦力を結集して徹底抗戦の構えを見せる。
他方、《大陸》を西へと周りながら北方へと進撃した《デモニアクス》は《ギレヌミア諸族》のもとへと乗込み、氏族長を各個に叩き伏せることで彼らを交渉の場へと引きずり出した。
すべての《ギレヌミア諸族》も、魔族陣営が最終攻勢に出ることを聞かされて、人族陣営への参加を表明した。
何百万という《魔獣》の群れが《大陸》中央部の《ロクトノ平原》にひしめく。
それを率いる四人の《魔王》と《獣人》の長たち。
北西から《エルフ》と《ドワーフ》。
西から《グリア諸王国》。
東から内海を南東へ大きく迂回して《王制アラシュヴァーナ諸国》。
北東から《ギレヌミア諸族》。
そして、南から《デモニアクス》に率いられた《ルエルヴァ国軍》が《ロクトノ平原》に集結した。
この決戦で、《魔族》と《獣人》の多くは討ち死にし、敗走。
《魔族》の統制を失った《魔獣》は三々五々散っていった。
《デモニアクス》はさらに北へと侵攻したが大きな抵抗には合わず、諸所に残存していた《魔族》や《獣人》たちは、《エルフ》や《ドワーフ》、そして人族の手によって各個撃破されていった。
加えて、北へと逃げ延びた《魔族》と《獣人》たちの間で、内紛が起きた結果、そのすべてが絶えたと考えられている。
以来、《魔族》や《獣人》の目撃報告は無い。
ただし、《魔獣種》は各地で繁殖し、大小の群れで人族を襲うことが頻繁になった。
《魔族戦争》終結後、《デモニアクス》は自衛手段に乏しい各地方の民衆のために私財を用いて、兵員組織とは別に新たな小勢の戦闘集団を派遣・管轄する組織の設立に尽力。
それまで地下組織であった《秘密結社》のうち、多くの協力を得て《冒険者ギルド》を設立。さらに、国を挙げての支援体制の整備を《旧ルエルヴァ国》へ提案した。
《ルエルヴァ共和国》へと名前を変え、戦後に職を失った兵士たちを持て余していた《旧ルエルヴァ国》は、《デモニアクス》の提案を受諾。
新しい民階級枠を用意して、大きく国家に貢献した《
また《冒険者》には、地図から消えてしまっている旧・《魔族》の領域の探索も課されることとなる……。
「……うーん……」
詳細な事跡は飛ばしながら、ざっと読んでみたけど、それらしいのは最後のほうの『魔族陣営内での内紛』というものぐらい。
アンリオスは、ニックが誰かを唆して《海》を渡らせたと言っていたけど、それに関する記述も無い。
それどころか、《魔族》も《獣人》も絶滅したっぽく書かれてる。
少なくとも《獣人》のうち《人馬》が生きていたのはこの目で昨夜見ているし、この本に書かれていることは人族側からの視点だ。
多少、事実と食い違う部分があるんだろう。
結局、間違いなくニックに関する手掛かりだと思えるようなものも無い。
ただし、人間並みに知性を持ったふたつの種族がそんな短期間で絶滅したというのはおかしい。
そんなの前世の世界でもほぼ考えられなかった。
いくら数が減っていたはずだと言っても、やっぱり《人馬》のようにどこかに生き残っていると考えるのがふつうだ。
だからこそ、その残党の探索も目的として《冒険者》なんていう職業が認められたんだろうけれど。
……たぶんだけど、ニックが《魔族》や《獣人》を《海》の向こうとやらに逃がしたんじゃないか?
それは言わば、人族への裏切り行為だけれど、アンリオスたち《人馬》への裏切り行為では無いように思う。
むしろ、手助けだと言っていいのでは?
じゃあ、ニックの裏切りってなんなんだろう?
それに裏切ったというなら、どうして《魔族》や《獣人》を逃がしたんだろう?
それだけじゃない。
ニックは今、なにを考えているんだろう?
イルマと結婚して《ザントクリフ王国》に就職しているし、この国のために働いているようだけど……?
僕はふと思い立って、ふたたび本棚へと向かう。
以前にも手に取ったことがある、〈世界の種族〉という薄い本。本というより冊子に近いかもしれない。
挿し絵も載っていて、どちらかというと子供向けっぽい。
その《魔族》のページを改めて開いてみる。
〈《魔族》:《大魔王》と十三の《天魔》を祖とする種族。それぞれの祖となった《天魔》によって十三の氏族に別れていた。魔力量に秀で、かなりの長命。過去、千年に亘って確認された個体もある。人族に遅れて創られたと言われている。かつて十三の《魔王》を戴き、魔族の中には《魔獣》を操る個体もいた。魔族戦争において絶滅。……魔族の身体的な特徴:赤髪。灰赤色の肌に、血の色の瞳が多い。また各氏族によって様々な身体的特徴を持つ……〉
ちなみに、《大魔王》とやらはとっくの昔に死んでいるらしい。
《大魔王》が死んだときに、《天魔》が歌ったという哀惜の詩は、ニックの得意とするものでもある。
そんなことよりも。
「……そういえばあったね。……『各氏族によって様々な身体的特徴を持つ』なんて記述……」
前はさらっと読み流したこの曖昧な一文が結構、重要に思えてくる。
以前は、羽とか角とか鱗が生えているとか、そういうことなんだろうと思っただけだったのに。
だって、わざわざその前に髪とか瞳とか肌とかの色が載せられてるんだ。それ以外の特徴だと思うじゃないか。
下手すると、『様々な身体的特徴』の中には《魔族》の基本的な特徴であるはずの、瞳とか肌の色も入ってくるのかも……。
「……ニックは《魔族》なんだろうか?」
僕の耳が、ニックのものらしき声を拾う。僕は改めて両手を耳の後ろ側に当てて、城のほうへと向ける。
だいぶ籠っているけど、絶対ニックだ。さらに、耳を澄ますと複数の男性の声が聞こえてくる。その中にはマルクス伯父の声もある。
……会話の内容が聞こえるといいのだけれど。
……やっぱり聞こえない。
背中で扉が開く音。
城のほうに集中し過ぎた。
「坊ちゃん、昼食の……坊ちゃん? 裸でなにをしておられる。しかも、その慌てた様子は――」
「違います! ガイウス! 違うんです!」
僕は床に置いたローブで前を隠しながら、必死で弁解した。
〓〓〓
〈――ルエルヴァ共和新歴百九年、ザントクリフ王国歴千四百六十六年、ヴォルカリウスの月、十四夜
マルクスが無茶苦茶なことを言い出した。
今日は気分が優れない。
明日が憂鬱だ……〉
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