望まぬ進歩

 キッチンに戻るとキトリの母が指を組んで祈るように立っていた。木枠から光は漏れて来ない。今はもう夜なんだとキトリは悟った。

 地下にもぐっていたって聞こえるような怒号のサイレン。これがなるのは決まって『放送』の時だった。また一人ゼロ・レイスが見つかってしまったのだろうか。他人事では無い事態にまた恐怖せねばならないのだろうか。しかし、誰とも知らぬ声が告げた事実は、そんな事を遥かに超越した悪魔の雄叫びのように響き渡った。


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バドラル国家緊急放送。バドラル国家緊急放送。

バドラル国民に告ぐ! 今朝の号報の通り、ゼロ・レイスの位置を特定出来るレーダーが完成した!

これにより、ゼロ・レイスの保護がより確実なものとなった! これは喜ばしい事だ! この大戦に終止符を打ち、世界を平和に保つために日々奮迅する我がバドラル国の栄光の一歩となるだろう! ……繰り返す!

バドラル国民に告ぐ! 今朝の号報の通り、ゼロ・レイスの位置を特定出来るレーダーが……

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 誰もが凍り固まったままだった。

 今何て言った?

 何が出来たって言った?

 全く解らなかった。解りたくなかった。母の絡まった指先の力は、その両手の甲を深くえぐるほど強くなっていた。天を仰いだままの父も、下で作った握り拳は今にも砕け散りそうな力で震えていた。

 

「な、、なんなの……なんなの? なんなの!?」

 キトリの必死の叫びも、放送によって全く聞こえはしなかった。


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……の栄光の一歩となるだろう!!

現刻より、ゼロ・レイス保護のため、反応のある区域の全面調査を行う! 反応が確認されている場所は三個所! 現刻より調査兵が反応個所にて捜索を行う! 調査兵の訪ねる質疑に偽り無く答えるものとし! 速やかにゼロ・レイス保護の協力を求む! ・・・繰り返す! 現刻より、ゼロ・レイス保護のため、反応のある区域の……

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 再び同じ事が繰り返され


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バドラル国家に栄光あれ! バドラル国家に栄光あれ!!

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 放送が切られた。

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