どうして
泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。もうお昼頃だろうか。
色んな思いが巡りながらキトリは体を起こした。目蓋が重たくて目をゴシゴシこすったが、余計に痛くなってきた。縮こまって壁にもたれるように座ったキトリは、牛乳を零して自分を見る母の顔と、怒った父の恐ろしい顔を思い出していた。
どうして製鉄場に行っていた事がばれてしまったのだろう。キトリは自分が『ヘマ』をしたかあれこれ思い返していた。服が汚れていたからかな……でもここで寝るから汚れるのは当たり前だし…と、思案をどのように重ねても、行き着く答えは「お父さんがお母さんに話した」の一つだった。
「どうして……」
行き場を無くした思いがキトリを呟かせた。拠り所としていた大きな支えが音もなく消えていくようだった。ぐるぐると回る思考回路はやがてキトリにもう一度睡魔を呼び起こし、足を折り曲げて座ったまま、キトリは眠りに落ちた。
更にどれほどの時間が経っただろう。
製鉄場の機械の音を遥かに凌ぐ、爆撃のようなサイレンが鼓膜を突き抜けて脳にまで響き、キトリは飛び起きた。同時に押し壊しそうな勢いでシャッターが開き、キトリの姿を見に来た父の姿があった。汗だくだった父は、キトリの右手を取ると、キッチンに向かって手を引いて走った。サイレンの音で解らなかったが、製鉄機械が全て止まっている事に、キトリは走りながら気がついた。
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