オレ彼!?★ 街灯の君の章 醍醐寺 遥華(はるか)

大正ロマンを感じさせる豪華な洋館の、

厨房から、

美味しそうなご馳走の匂いが漂っている。


女学校から帰宅していた私は、

道すがら、

ただようごちそうの匂いを嗅ぐと、

グーっとお腹の虫が、

起こされた!


あら、嫌だわ!!

恥ずかしいわ……。


周りに誰も居なかったのは、

幸いですわ。


今日のお昼ご飯は、

何かしら♪


私は、うきうきしながら、

洋館の門の横にある、

通用門へ行くと、


「お帰りなさいませ。」


と、うやうやしく使用人が、

鍵を開けて招き入れた。


「ただいま!」


私は、流行りの矢がすり柄に袴、

ブーツを履き、

前髪と横の髪を

後ろに束ね、

大きなリボンで飾っている。



「お嬢様、お帰りなさいませ。」


玄関には、

使用人が控えていて、

うやうやしく一礼をした。


「私、お腹が空きましたの、

遙華(はるか)ちゃんは、

帰っていますか?」


「遙華お嬢様は、

庭で、

花壇をご覧になられていらっしゃいます。」


「あら、そう!

わたくしも、

庭に行きたいわ♪」


はやく荷物を

私の部屋に置きに行きましょう!


階段に向かって、

小走りに、

二階に上がり、

手にしていた学用品の入っている風呂敷包みを机に置いた。





すると、

ぐらぐら激しく地震がおきた!!


「地震だわ!!」


本棚や、アンティークの飾り棚が次々と倒れる!!

私は、

立って居られなくなって、

ベットに倒れ込んでしまった!!


ゴゴゴゴ……。

ガチャン!! バタン!! バリン!!


怖いわ!!


なんて凄い地震なんでしょう!


こんなに激しい揺れは、

初めてだわ!!


布団に潜り込んで、

揺れるベットに必死にしがみついた!!


ほどなく、焦げ臭い煙が漂ってきた!?


「絢香お嬢様、

火事です!

お逃げ下さい!」


使用人が、

階下から大声で呼びかけていた!!


揺れが収まったので、

恐る恐る、

布団から、

顔を出してみると、

煙で、周りの様子が分からなくなっていた!?




窓を開けなくちゃ!!


あら?

窓……どこかしら!?


私は、

一呼吸したとたん、

煙が鼻と喉にひろがり、

咳き込んでしまった!!


苦しいわ!


息を吸うと、

煙も吸ってしまう!


シーツを鼻と口に当ててみた。


さっきより、

ましになった……わ。


眼が痛い!!


涙目になりながら、

眼を細めて、

手探りで、出口を探した!!


ブーツは、散乱した硝子片や、

本などを踏む!


転びそうになりながらも、

なんとか踏んばって、

私は、1歩1歩歩いた。


床が凄いことになっていることを感じながら、


なんとかドアにたどり着けた!!


ドアノブを開けようとしたけど、

ドアが開かない!?


鍵かけていないのに!!


私は、必死に開けようとしたけれど、

どうしても開かなかった……。


私は、

袂から、

小さく折られた手紙を

取り出した。


街灯の君へ


小さくそう書いてあった!!


ここで死んだら、

あの方に、

会えなくなるわ!!


早くここから出なければ!


必死にがちゃがちゃ、

ドアノブを回したり、

押したり引いたりしていたけれど、

金属製のドアノブが、

火傷しそうな熱さになってきた!!



私の意識が、

遠のいてきた……。





私は、眼を開けた。


恐ろしい夢を見たような……。


こんなに酷い地震は、

初めてだった……。


煙が充満して、

ドアが開かなくて……。


気がつくと、

私の部屋の、床で倒れていた。


「ここにいらしたの?

絢香お姉さま。

風邪引きますわよ!」


小学校低学年位の女の娘……。


「遥華(はるか)ちゃん!」


遥華……は、妹……。


そして、私は、醍醐寺 絢香(だいごじ あやか)。





「ねぇ~、お姉さま、

遥華のお部屋にいらして!」


「ええ、良くってよ!」


遥華に手を引かれ、

私は、階段を上る……。

家は二階建てじゃなくて?


「建て替えしたのよ!」


遥華が答える。


「いつの間に……。」


遥華の部屋には、

何故か、

おばあさまが、

ベットに寝ていらした。




「おばあさま?」


「おばあさまじゃないわ、

お姉さま、

私です!」


「え?」


「あれから……沢山時間が過ぎてしまいましたの……。

私は、すっかりおばあちゃんになっちゃったの。」


「遥華ちゃんが?」


遥華だと言い張るおばあさまみたいな女性に

手を触れてみた。


彼女から、何十年分の記憶が、

私に流れ込んだ……。


本当……随分長い時間が過ぎてしまっていたのね……。


私は、長い時が、

過ぎ去っていた事に、

愕然とした!!





私は、遥華と、

一緒にテレビというモノをみた!!


遥華の記憶から、

あれから色々な事があって、

随分、世の中変わってしまいましたのね~。


随分短いスカートを履いた娘さんが、

後をつけられた男に、

夜道に襲われて、

殺されただなんて……。


毎日のように、

誰かが殺されただの、

テレビというモノのニュースで、

流れてくる……。


良家の子女は、そんな遅くに出歩かないのに……。


世の中の変わりように、

面食らっていた!!




遥香ちゃんの記憶から、

私が、関東大震災という、

大地震の火災で、

死んでしまった事を知った!!


どこの家庭でも、

お昼ご飯を作っている最中に、

あの揺れが起きたから、

台所から、

家屋敷に燃え広がり、

延焼していったのだという……。


遥香ちゃんは、

始めから、

建物がないお庭に居たので、

側にいた使用人たちに、

守られて、

無傷だった。


料理人たちが、

食器棚の下敷きになったり、

火災に巻き込まれて、

犠牲になったけれど、

お父様、お母様、

ほとんどの使用人は、

無事だった。


私につけ文をしたあのハンカチの方の学生さんは、

ご無事だったかしら?


遥香ちゃんの記憶には、

ハンカチの方の学生さんの消息は無かった。





私は、遥華の頭が、

年を取ってしまったため、

頭がボケているのを知った。


うつらうつらしていると、

遥華の身体に入ることも出来た!!


遥華は、

足腰丈夫なので、

ゆっくりだけど、

歩く事が出来た。


私は、遥香ちゃんの身体に入って、

遥香ちゃんの生きている世界を

もっと知りたいと思った!!

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