第2話 クライアント

<楓雅視点>


「お待ちしていました・・・自己紹介が遅れました。私がアイドルカウンセラ-の

 安海 楓雅(あつみ ふうが)といいます。

 水神みながみさんって呼んだ方がいいですか?」

そう、今日のクライアントは、今人気急上昇のアイドルグループ「LOVE LANCIA(ラブ・ランシア)」の1人、水神 蘭花(みながみ らんか)だった。

「LOVE LANCIA」とは、昨年デビューした、ランちゃん・しーちゃん・あんちゃんの3人組のアイドルグループで、名前の由来は、愛という意味の英語の『LOVE』イタリア語の「槍」を意味する『LANCIA』をミックスしたもので、「君のハートを愛の槍で突いちゃうぞ」と言うのがキャッチフレーズである。初めは地下アイドルでイベントやライブ活動でファンを増やし、今年の夏に本格的なメジャーデビューを果たしたばっかりである。ちなみに、プロデュースは、有名プロデューサーである、「やおよろP」である。

所属事務所は「LL(ダブル・エル)」である。ファンの中では「ラブラン」、コアなオタクには「愛槍(あいやり)」とも呼ばれている。3人とも個性があって魅力的であるが、特にリーダーのランちゃんである蘭花は、中性的な見た目ではあるが、可愛い声とのギャップで、なぜか目を離せない不思議な雰囲気をもっている、そんな感じの子だった。

「お好きなように、苗字でも名前でもどちらでもかまいません。」

「そうですか・・・では蘭花さんと呼ばせてもらいますね。」

これは、自分の経験上のやり方ではあるが、苗字だと、どうしても面接試験のようになってしまい相手を固くさせてしまう。なので、相手の了解を取って下の名前で呼ぶようにしていた。

「よろしくお願いします。」

と蘭花が頭を下げる。

「あの・・・ひとつ聞いてもいいですか?」

唐突に質問してくる蘭花。

「はい?なんですか?」

「・・・見えないんですよね・・・。」

「は?」

「『日本でただ一人しかいないアイドルカウンセラ-』に。」

どうやら、カウンセラーに見えない蘭花にとっては「こいつ、何者?」状態なのだろう。

「ああ・・・やっぱり、カウンセラーっぽく白衣着てたほうが良かったのかな?まあ

 確かに見えないかもしれないね・・・一応去年大学卒業したばっかりだし。」

「え?」

「18で飛び級してアメリカの心理学専攻の大学を卒業して、LCSW(認定臨床ソー 

 シャルワーカー)やLPCC(プロフェッショナル臨床カウンセラー)の資格は取っ

 たんだけどけど、アイドルの子って仕事柄、学校にいけないでしょ?だから心理的

 ケアと社会の常識とか学力保障を同時進行でケアした方がいいと思ってね。日本の

 教育学部を受け直したんだ。」

「そうなんですか・・・・」

「疑うんだったら、証明書とかライセンス見せたほうがいいかな?」

「いえ、大丈夫です・・・」

なんとか蘭花は納得してくれたようだ。


「さてと・・・忙しいと思うから早速本題に入ろうか・・・

 蘭花さんは、最近、精神的に過敏になってて、ドアの開閉音に過敏に反応したり、

 常に人の視線が気になって、そのせいで落ち着きに欠けて仕事に支障をきたしつつ

 あるって事務所からの依頼書にはそう書いてあるけど・・・」

「そうですね・・・」

急に神妙になる蘭花。

「何が原因なんだろう・・・・仕事のストレス?」

「・・・」

「マネージャーさんには相談したのかな?」

「・・・」

黙り込む蘭花。そうだよな・・・初対面の人にいきなり心開くって言うのはアイドルだって無理な話である。

(まったく・・・あの事務所はいっつもハードル高いやつもってくるよな・・・ま

 あ、信頼してくれるのは嬉しいけど・・・。)

だから、オレがこの国でただ1人のアイドルカウンセラーたる所以の方法を使って蘭花の悩みの種を探してみる。

これが方法なのか、能力なのか、オレ自身にもわからない。だから詳しい名称などもわからない。しかし、≪これ≫のおかげで、アメリカでも成功し、日本に帰ってきて、今の仕事ができるのだ。

オレは、蘭花の顔を注視し、意識を集中させる・・・。すると蘭花の周りが真っ白になり、蘭花の身体から、ある『ビジョン』が見えてくる。オレは、まるで映画を見るような感覚で、蘭花の『悩みのビジョン』を眺める・・・。

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I.C.〜アイドル・カウンセラー〜 信櫻 疾風 @saku39

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