第48話 冬の訪れ

 最近、気がついたことがある。


 ひとつは、いつの間にか冬が来ていたこと。

『寒い~』

 外に出た途端、冷たい風が私と右京に向かってきた。

『未央、ほら』

 差し出された彼の右手。

『……へへ。ありがと』

 寒い寒い季節が来ても、温かい気持ちと、熱い彼の体温に包まれる。

 私は今、とても幸せだってことを実感していた。


 もうひとつ。

 それを話したくて、夕方、千草の家を訪れた。

「なに?話って?」

 私は思わず千草に顔を近付ける。

 そして、最近気がついた『彼の変化』を口にした。


「……翔くん、晃のこと好きなんじゃない?」


 驚き、目をまんまるくした千草は、私にぐっと近付く。


「わ、私も思った!」

「や、やっぱり?!」

「うん!」

「だよね?!」

「うん!うん!!」


 二人とも同じく気が付いていたことにテンションが上がった。


 そう、きっと間違いない。

 翔くんは晃のことが好きだと思う。


 あれから、晃への悪口や嫌な噂はかなりおさまって、その代わりに、明るくなった彼女の人気が急に上昇していった。

 それだからか――

『……美人だけどさぁー』

『なんかねー』

 別の方向から彼女を傷付けようとする子たちが現れ出した。

 だから、私は、なるべく彼女のまわりにくっついて、彼女がその悪意に気が付かないようにしたいと思ったんだ。


 そうしていたら気が付いた。

 私より先に、晃を守っている翔くんの存在に。


 彼はいつもふざけているから、一見、ただ彼女のまわりをチョロチョロしているだけに思えるけれど、360度アンテナを張り巡らせて、彼女のことをちゃんと守っていたんだ。


 それに。

『これ、美味しい!ありがとう、翔』

 クリームパンを食べながら満面の笑みを浮かべた彼女を、穏やかに見つめるあの瞳は、恋してる瞳で間違いない。


「しかも、あのクリームパン、購買のじゃないからね!」

「そうなの?」

「うん。購買にクリームパン置いてないもん!」

「え?翔くん、今日も晃ちゃんに買ってきてたよ?!」

「どこから買ってきてんだろ?」


 彼女の笑顔が見たいから、彼女を喜ばせたいから、ただそれだけのために彼は彼女に優しさを贈る。


 叶うといいな。そう思った。

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