第47話 変化~翔side~
あの日から、変わったことがいくつかある。
まず、俺と晃があいつらと一緒にいるようになったこと。
『西村はいいけど、森口はちょっと……』
『さ、左京くん!』
『左京~!下の名前で呼んでくれよ~!』
『うっさい!なつくな!』
それから、昼飯の場所が変わったこと。
『ねぇ、右京、ここ本当に大丈夫?』
『大丈夫だろ!』
右京が見つけた別館の、とある教室。
『あ~よく見つけたね。ここ』
『ん?西村ここ知ってんのか?』
『うん。サテライト教室って言ってね、夏休みとか冬休みとか衛星講習やるの』
その広くて綺麗な教室が、俺たち6人の冬場の集合場所になった。
でも、やっぱり一番は、あいつがよく笑うようになったこと。
数学の前の休み時間、忘れていた宿題に気付き慌てた俺は、思わず彼女に助けを求めた。
『あきらー!宿題の、問2の答えー!!』
俺の席は廊下側の一番後ろで、彼女の席は窓側の一番前。見事なまでの対角線。
騒がしかったクラスのやつらが一気に静まり返ったから、そこでやっと自分のミスに気がついた。
晃は、俺たちの前ではだいぶ解れてきたけれど、クラスの中だとまだまだだってことに…。
――しまった。やらかした……。
ドキドキしながら彼女の方を見ると、シャープペンを持ったまま固まる後ろ姿がそこにあった。
けれど次の瞬間、俺はかなり驚いた。
『答えだけ聞いたってダメでしょ』
彼女は立ち上がり振り向くと確かにそう言って、微笑んだ。
窓から差す白い光に照らされた髪は一本一本がわかるくらいにキラキラと透けている。それは、クラスのやつら全員の目が奪われるほどに綺麗だったから、こんな離れたところから声をかけてしまったことを少し後悔した。
***
「西村、さっきのお礼」
「え?」
彼女の机の上にのせた、たくさんのパン。
何がいいか、何が好きか考えているうちに、あれもこれもと買ってしまった。
購買の惣菜パンと、菓子パン。それと、別枠からもうひとつ。
購買からは6種類も買ってきたのに、彼女は迷わず別枠のそれを選んだ。
俺が今朝、登校前に寄った近所のパン屋のクリームパン。
「え?これ?いいのか?これで」
「うん。これ、美味しそう。……これ全部購買の?」
「あ、うん。そう」
思わずそのクリームパンも購買から買ったと嘘をついた。
なぜなら、彼女が気にして、他のと変えるとか言い出したら嫌だなと思ったから。
「じゃ、行くか」
「うん」
彼女は楽しそうに笑う。
どちらかといえば、ずっと、青に近かった彼女の白い肌は最近、ピンク色に近い白になった。
「なに見てんの……?」
「いや、別に……」
「一回100円」
「はぁ?!金とんのかよ!」
「ぷっ。アハハハハハハ」
「お、おい、晃っ!」
「翔!どっちが先に行けるか競争ね!負けた方が帰りにジュースおごりっ!」
そう言って彼女は駆け出した。
大きな口を開けて笑う。
これが本当の彼女の姿なんだとわかる。
――もっと前に助けてやりたかったな。
――もっと前に出会いたかったな。
彼女の後ろ姿を追いかけながら、そう思った。
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