第35話 ブルー
自分の事に精一杯ですっかり忘れていたことを凄く後悔した。
拾った青い髪飾り。
留め具の後ろ側は何ヵ所か違う色のワイヤーで直した跡がある。
大切に、大切にされていたのがすぐに分かった。
「でもそれ、エルサのかどうかわかんないでしょ」
久しぶりに二人だけのお昼休み。
思いきって打ち明けた髪留めの話。
けれど未央のその言葉に反論する確実な証拠も持たない私は、軽く頷き、お弁当の卵焼きを口にいれた。
「あのガーベラさんが西村さんな気がするんだけど……」
そう話した私に未央はすぐに反論した。
「私、お花に詳しくないけど、彼女はガーベラっていう感じじゃないじゃない。それに、男をとっかえひっかえしてるエルサが、そんな髪留め大事にするイメージないんだけど」
どことなくトゲのある彼女のその言葉に違和感を覚えた私は、『何かあったの?』と聞いてみたけれど、未央はただ首を横に振っただけだった。
「左京くんと二人っきりがいいかもしれないけど、今日みんなで一緒に帰らない?」
「み、未央!」
食べ終わったお弁当箱を片付けながらイタズラに笑う彼女。
照れる私に喜んだ彼女がペットボトルの蓋を開けようと手を伸ばした時だった。
「未央ちゃーん!」
遠くからパタパタと靴を鳴らして近づくその子は、あの日、西村晃が叩かれたあの日、顔を覆って泣いていた彼女だった。
「塩田茉由です♪」
語尾が上がる甘ったるい声でそう言ったかと思うと、彼女は当たり前のように私たちの間に座る。
くるくる変わる表情と、花のような甘い香り。
「髪型……」
「パーマ飽きちゃったからストレートにしたのー!」
あの日と違う彼女の髪型に気付く。
あの日、西村さんと揉めていたあの日の彼女は確か、長い髪を柔らかく巻いていたはず。
それは何となく西村さんの髪型の方に似ていたのに。
サラサラのストレートに変わった今の髪型は少し前の未央に似ている気がした。
「あー!!」
突然彼女は、私の右側に置いてあった髪留めを見つけ、驚嘆した。
「これあたしのなの!」
そう言うやいなや、私の前に手を伸ばし、つまんだそれをパチンと素早く頭につけて『ありがとう』と笑った。
キラキラ光るガラス玉と、漂う甘い香りは一緒なのに。
私の記憶と、今この現実とに、私は何か違和感を感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます