第29話 募る不安
見上げるほど伸びた身長と、茶色く染めた髪の毛、着崩した制服姿のその人が、まさかあの園田くんだなんて少しも思わなかった。
なぜなら、小さい頃の彼はこんなによく喋るタイプじゃなかったし、いつも上下黒のジャージばかり着ていて、こんなに派手なイメージはまるでなかったから。
『なんで園田だってわかったの?』
帰り道、未央にそう聞かれたけれど、そんなのは自分だってよくわかっていない。
けれど、ただなんとなく『千草ちゃん全然気がつかないんだもん』と拗ねた彼の表情に昔の面影が重なる瞬間が突然訪れた。
なぜかわからないけれど『園田くん』だと思って呼び掛けてしまったんだ。
私が気が付いたことをとても嬉しそうにしたあと、それは突然始まった。
彼からの突然の謝罪、そして突然の告白。
一瞬何のことかわからなかった。
それほど彼は簡単にそれを口にした。
私が、戸惑いながらも思わず笑い返してしまったのは、本当にどうしていいかわからなかったから、ただそれだけ。
告白されるなんて初めてだったし、しかも大勢の前だったし……どんな反応すればいいのか、頭が真っ白になってしまってさっぱりわからなかった。
それに、私が知っている彼の両親は仲がよくて、いつも幸せそうだったから、とても別れてしまうようには見えなかったのに、彼の口から話された事実は私にとっても相当衝撃的でショックなものだったのだ。
しかも『両親が離婚したんだ』と話した彼は、ほんの一瞬だけ、とてもとても辛そうな目をしたような気がして……すぐに拒絶することなんて出来なかった。
彼の明るい振る舞いが、その辛さを必死に隠すために、無理しているように……そんな風に見えてしまったから。
『せっかく左京くんといい感じなのに。ちゃんと断らなきゃだめだよ』
未央の言う通りだと思う。
私だって『隣に左京くんがいるのに』と、そればかり考えていた。
私の曖昧なその態度のせいか、あの日からどこかギクシャクしている二人。
『今日こそは……』『次の休み時間こそは……』『お昼休みこそは……』こうやって、願いを実行に移せないまま時間だけが過ぎる。
時間が経てば経つほど勇気が必要になることくらいわかっていたのに今日まで何も出来なかった。
……左京くん。
……左京くん、あのね。
頭の中で繰り返し練習する。
『左京くん、あのね、今日良かったら帰り一緒に……』
――よし!
私は体じゅうの勇気を振り絞って隣の彼に顔を向けた。
「……さ、左」
「ちぐさちゃーん!!」
前の扉から聞こえたその大きな声に、かき消される私の声。
園田くん、いや、森口くんは、あっという間にやってきて、私向きに前の椅子に腰かけた。
森口くんが悪い訳じゃない。傷付けるのが怖くてハッキリさせられない私が悪いんだけど……そんなのわかりきっているんだけど。
左京くんあてに用意した言葉が喉のあたりで止まったままだ。
ううん、用意した言葉がどうのこうのじゃなくて……そうじゃなくて。
――話したい。
私、左京くんと話したい。
もうずっと、ずっと話したくて堪らない。
森口くんと話す時間が増えれば増えるほど、その気持ちが膨らむことに気付いていた。
――左京くん!わたし!
「高木」
それは一瞬だった。
私が口を開こうとしたのとほぼ同時、彼は私の名前を呼んですぐに腕を引いた。
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