第28話 募るイライラ
あの日から俺は毎日イライラしている。
制服も脱がないまま、荒々しくひいた部屋の椅子に腰かけて、買ったばかりの雑誌を捲った。
毎日、しかも毎休み時間、高木の回りをちょろちょろする森口を今日も横目で見てきた。
『あの……前に話したよね。あの……小学生の時、札幌に転校した男の子が園田くんなの』
二人で日直だったあの日に聞いた高木の思い出。
名前をからかう同級生に『千草』という名前の本当の意味を伝えたかった不器用な奴。
高木の、初恋の相手。
まさか、そいつが園田であり森口だなんて。
『戻ってきたの?』と問いかけた高木に、『両親が離婚したんだ』と一瞬俯いてから、苦笑いした森口に同情したのは嘘じゃない。
――嘘じゃないけど!
その直後のあいつの行動。
イライラの原因はそれ。
あいつは、立ち止まった校門の前、しかも大勢が見ている前で、彼女にいきなり想いを告げる。
イライラがまるで収まらない俺は、バンっと思いきり閉じた雑誌をベッドに向かって投げつけ、椅子の背もたれに背中を預けた。
『俺、あのことずっと後悔してた。会えたら絶対謝りたいと思ってたんだ』
『それからもうひとつ、伝えたかったことがあるんだ』
『千草ちゃん』
『……君が好きです』
閉じた瞼に浮かぶその光景。
あいつの真っ直ぐな告白で、まわりのやつらがザワザワ騒ぐ。
女子の、悲鳴にも似たどよめき。
ただ、その他大勢の観衆がどう騒いだかなんて正直どうでもいいことだった。
頭の中を支配してるのはただ1つ。
すぐに彼女の方を見た。
困っているだろうと思っていた。
戸惑っているだろうと思っていた。
けれど、現実は予想とは少し……いやかなり違っていた。
その告白を受けた高木は、戸惑いながらも嬉しそうに笑ったように見えた。
ふんわりと、柔らかく……。
***
今日の中休みも、あいつは当たり前のように現れる。
『森口と高木って付き合ってんの?』
『左京くんじゃないの?』
『知らないの?森口くんの告白!』
毎日囁かれる噂話。
俺と高木、ではなく、森口と高木、にすりかわりそうになっていることにも苛ついた。
しばらく彼女とちゃんと話せていない。
昨日もその前の昼も……ギクシャクしたままだったから。
話したい気持ちはどんどん募る。
「……高」
「千草ちゃん!!今度さぁデートしようよ!」
俺の声をかき消すように放たれたその言葉。
森口のその一言に、溜まりに溜まったコップの水が溢れ出した。
「――高木」
顔を上げた彼女と目が合う。
それは、もうずっと長い間、合っていなかった気さえする。
……話したい。
……二人になりたい。
気付いた時にはもう、彼女の腕を無理矢理引いて教室を飛び出していた。
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