(読み切り)ネコ大盛り始めました。

高須啓二

第1話 ネコ大盛り始めました

 私の名前は戌亥健太。


 何処にでもいるしがないサラリーマンだ。


 自分で言うのも何だが、毎日の勤労奉仕に文句も言わずにコツコツと、ただただ真面目に業務をこなすだけの、真にしがないサラーリーマンだ。


 そんな私が人生における、唯一の癒しとして足しげく通っている店がある。


 それが、ここ。


『ネッ子カフェ』


 所謂ネコカフェだ。


 名前は怪しい名前だが、入ってみると何てことはない普通のネコカフェだ。


 決して怪しい店ではない。


 ・・・はずだ。


 月に一度までにしようと思っているのだが、ついつい月2回。多い時は毎週通ってしまう。


 入店した途端、可愛いネコちゃんたちがくつろいでいる。ネコちゃんのプライベートスペースを覗き見しているような非日常を味わえる、まるで大人の遊園地みたいな場所だ。


「いらっしゃいませ〜」


 私はお気に入りのスペースでいつものブレンドを頼む。


 そして・・・。


 見つけた・・・。



 タマちゃん!


 ああああああああああああああ!!!!


 今日もかわいいでちゅねええええええ!


 そう心の中で叫びを上げながらブレンドを啜る。


 あくまで心の中だけだ。


 ネコちゃんたちがビックリしてしまうからな。


 ネコちゃんの嫌がることはしない!


 YESネコちゃんNO!タッチ


 無理やり抱っこしたり、追いかけたりなどはもっての外だ。



 ああでも膝に!膝にタマちゃんがああ!


 そっちから来たならセーーーフ!


 はあはあはあはあ。


 いかん取り乱してしまった。


 いやしかし、タマちゃんから誘ってきたんだから仕方ない。


 据え膳食わぬは男の恥だ。


 全力で撫で撫でする。


 するとタマちゃんもゴロゴロと応えてくれる。


 はあん!!!


 かわうぃぃぃぃいいい!


 タマちゃんはいつも可愛いねえ!


 愛しいタマ、おはよー!チュッ(笑)


 もう俺とタマは既に運命共同体となっておりますので、どうか最後までお付き合いください(笑)


 はあはあはあ・・・。


 いかん取り乱してしまった。


 いやしかし、タマちゃんから誘ってきたんだから仕方ない。


 大事なことなので二度言った。


 心の中で。



 冷静さを取り戻すために店内を見回してみると、見慣れないお知らせが書かれていた。


『ネコ大盛り始めました』


 ネコ大盛り?はて、どういうことだろうか。


 まさかネコちゃんをどんぶりに入れて来るわけでもあるまいし。


 いや、それはそれで可愛いが。


 ネコちゃんを食べるわけもない。


 私はそれとなく店員に聞いてみた。


「ネコ大盛りって何ですか?」


「はい〜ご注文頂きますとネコちゃん大盛りになります〜」


「いや、だからどう言う意味ですか?大きいネコ、メイクーンとかとふれあえると言うことです?」


「いえ、ネコちゃん大盛りでふれあえます〜」


「ラーメンみたいにどんぶりから溢れるような?」


「お客様、ネコちゃんは液体ってよく言われますけど、流石に食べれないですよ〜」


 笑われてしまった。


「ネコ大盛りは特別料金をお支払い頂けると、別室でネコちゃんと触れ合えます〜」


 そう耳元で囁かれる。


 え?何それ怖。


 本当に怪しくないやつなのだろうか。


「え?どう言うこと?怪しい話?」


「お客様、怪しい話ってどういう意味ですか〜?」


 また笑われてしまった。


「大盛りプランは、ネコちゃんたちがたくさん集まってくる、特別な餌をあげられます〜」


「ああ、そういう・・・」


「そういう?」


「何デモナイデス気ニシナイデクダサイ」


 危なかった・・・。


「とにかく、沢山のネコちゃんと個室で触れ合えるってことですね?」


「はい〜もうお部屋から溢れんばかりです。ちなみに、10分1500円になります〜」


「え?短くない?」


「あまり長時間ですとネコちゃんたちにストレスを与えてしまうので〜」


「なるほど」


「いかがしますか〜?」


 うーん、ものは試しだ。


「じゃあお願いします」


「かしこまりました〜」


 すると、通されたのは3畳あるかないかの小さな部屋。そこに待ち受けていたものは。



「1匹もいない」


 まさか、詐欺だったのかと、落胆していると。


「本番はここからですよ〜」


 そう店員さんが笑顔で囁き、例のネコの餌を取り出した。


 そしてそのCMで流れる例の歌を歌いだした。


 すると、それを待っていたかのように、大量のネコちゃんたちが部屋に雪崩れ込んでくる。


 ネコネコネコ。


「こ、これは・・・」


 ネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコネコ。


「たまらん・・・」


 ネコネコにゃーにゃーネコにゃーにゃー、ネコネコにゃーにゃーネコにゃーにゃー、ネコネコにゃーにゃーネコにゃーにゃー。


 まさに至福の時間だった。


 私が至上の幸福に浸っていると、店員さんが近づいてきて、艶かしく私の耳元で囁いた。


「お客様・・・」






「倍の価格でネコだくコースというのもございますが、いかがしますか?」


「お願いしますう」

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