概要
理論は全部知っている。足だけが、六歳だった。
「やっておけばよかった」
2030年、四十歳の夜。三上朔は一人の部屋で、日本代表が負けるのを見届けた。
棚には、十二年前に死んだ父が遺したビデオテープ。朔は毎週試合を分析し、子どもの育て方の本を何十冊も読んできた。サッカーのことなら一時間でも話せる。けれど自分では、ほとんどボールを蹴ったことがない。父と並んで試合を観たことも、一度もなかった。
目を覚ますと、1996年。六歳の春だった。
2030年までの理論は、全部頭に入っている。ボールがどこへ来るかも見える。なのに足は空を切り、体は一年生でいちばん小さい。少年団では「練習中に水を飲むな」が当たり前で、正しいことを言っても、六歳の言葉は大人に届かない。
そして家には、まだ若い父がいる。2018年にいなくなることを、朔だけが知っている。
2030年、四十歳の夜。三上朔は一人の部屋で、日本代表が負けるのを見届けた。
棚には、十二年前に死んだ父が遺したビデオテープ。朔は毎週試合を分析し、子どもの育て方の本を何十冊も読んできた。サッカーのことなら一時間でも話せる。けれど自分では、ほとんどボールを蹴ったことがない。父と並んで試合を観たことも、一度もなかった。
目を覚ますと、1996年。六歳の春だった。
2030年までの理論は、全部頭に入っている。ボールがどこへ来るかも見える。なのに足は空を切り、体は一年生でいちばん小さい。少年団では「練習中に水を飲むな」が当たり前で、正しいことを言っても、六歳の言葉は大人に届かない。
そして家には、まだ若い父がいる。2018年にいなくなることを、朔だけが知っている。
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