概要
八十年、正午の二分前で止まったままの係長に、住所をあげたい。
百年使われた道具には魂が宿り、届け出れば「住民」になれる国。物の声が聞こえる新人公務員・柚木灯は、汐見坂市役所の市民課器物住民係に配属された。窓口に来るのは、売られる前に「ここにいた」と残したい桐の箪笥、手紙を勝手に届け直す商店街のポスト、五十年前の事故を悔やんで暴れる信号機。灯は、一つずつ声を聞き、返事をし、住民票に名前を記していく。
隣にいるのは、無愛想で秒単位に厳しい係長・鳴海朔。彼の手首からは秒針の音がし、鏡には映らず、手紙は一通も届かない。そして坂の上の旧庁舎では、大時計が八十年間、正午の二分前で止まったまま。
その旧庁舎の解体が決まった日から、係長の足音は重くなっていく。
住所のない人の居場所を、どうやって役所の書類で守るのか。届出人の欄に、自分の名前を書く覚悟はあるか。
声を聞
隣にいるのは、無愛想で秒単位に厳しい係長・鳴海朔。彼の手首からは秒針の音がし、鏡には映らず、手紙は一通も届かない。そして坂の上の旧庁舎では、大時計が八十年間、正午の二分前で止まったまま。
その旧庁舎の解体が決まった日から、係長の足音は重くなっていく。
住所のない人の居場所を、どうやって役所の書類で守るのか。届出人の欄に、自分の名前を書く覚悟はあるか。
声を聞
大感謝です。
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