概要
息を殺せ、襖一枚の向こう側に本物の絶望が這いずっている
遺品整理のために訪れた、山間にある築百年超の古民家
深夜二時、一階から聞こえてきたのは、足音ではなく重く巨大な何かが畳を「這いずり回る」異音だった――
深夜二時、一階から聞こえてきたのは、足音ではなく重く巨大な何かが畳を「這いずり回る」異音だった――
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- ★★★ Excellent!!!「つぎは、おまえのばんだよ」
『息を殺す』を読み終えた私は、小さく息を吐いた。
不気味で恐ろしく、押し入れに閉じ込められた男たちの湿った息と絶望が、端正な文章から滲み出ていた。古い日本家屋の薄い壁ごしに、冷気が忍び寄るように……。
無論、今いる場所は古民家でも押し入れでも無い。スマホの液晶から漏れた光が照らす、無数の黒い影。その先に見えるハンガーパイプの冷たい光が、先刻、このクローゼットに逃げ込んだ事を思い出させた。
……ズルルッ……。
また、あの音が聞こえた。……安っぽい両開きの扉の、すぐ先で。
限界まで体を縮こめ、隙間から伺える外の様子に、意識を集中させた時だった。
……首筋が、妙に生温かい。誰もいない筈の暗…続きを読む