概要
「上着、一枚だけでいいんです」と言ったあの夜の私に、今度は備蓄がある。
9月7日の夜。
恋人と親友に殴られて、私はマンションの外廊下へ押し出された。
内側で、チェーンの掛かる音がした。
手すりには雪。ドア越しのテレビが、浦篠市の気温を−50度と告げている。
スマホも財布も、靴さえ、ドアの向こうに置いたままだった。
見守りカメラに映っていたのは、私のベッドに寝転がって、保険の受取人の相談をする二人。
大学からの親友と、三年付き合った恋人が値札を付けていたのは、私の家と、私の命だった。
目を開けると、真夏の会社のエントランスに立っていた。
スマホの画面は、8月18日、8時52分。
あの夜まで、20日ある。
二人は後回し。先に、雪だ。
有給を全部使って、その日のうちに退職届を出した。
恋人には「実家を一軒売って、新居にしよう」と笑ってみせる。
彼のスマホに並
恋人と親友に殴られて、私はマンションの外廊下へ押し出された。
内側で、チェーンの掛かる音がした。
手すりには雪。ドア越しのテレビが、浦篠市の気温を−50度と告げている。
スマホも財布も、靴さえ、ドアの向こうに置いたままだった。
見守りカメラに映っていたのは、私のベッドに寝転がって、保険の受取人の相談をする二人。
大学からの親友と、三年付き合った恋人が値札を付けていたのは、私の家と、私の命だった。
目を開けると、真夏の会社のエントランスに立っていた。
スマホの画面は、8月18日、8時52分。
あの夜まで、20日ある。
二人は後回し。先に、雪だ。
有給を全部使って、その日のうちに退職届を出した。
恋人には「実家を一軒売って、新居にしよう」と笑ってみせる。
彼のスマホに並
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