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概要
「破棄いたします」──かしこまりました。ではまず、署名を三つ。
「アンリエッタ・ロウデン。お前との婚約を破棄する」
夜会の真ん中で書面を突き出された侯爵令嬢アンリエッタは、泣かなかった。
ロウデン家は代々、王国の文書を預かる家である。彼女は「書式の鬼」と呼ばれていた。
だから、その紙に不備が三つあることに、読み終わる前に気づいた。
「差し戻します」
けれど彼女を本当に黙らせたのは、書式ではなかった。
その紙に並んだ字が、三年間読み続けてきた手紙の字と、まるで違っていたことだった。
──三年間わたくしに手紙を書いていたのは、あなたではありませんね。
翌朝、訂正された書面を持って屋敷を訪れたのは、王太子府の書記官だった。
彼の持ってきた紙は完璧だった。ただ一行だけ、書いてはならないことが書かれていた。
書式しか信じてこなかった
夜会の真ん中で書面を突き出された侯爵令嬢アンリエッタは、泣かなかった。
ロウデン家は代々、王国の文書を預かる家である。彼女は「書式の鬼」と呼ばれていた。
だから、その紙に不備が三つあることに、読み終わる前に気づいた。
「差し戻します」
けれど彼女を本当に黙らせたのは、書式ではなかった。
その紙に並んだ字が、三年間読み続けてきた手紙の字と、まるで違っていたことだった。
──三年間わたくしに手紙を書いていたのは、あなたではありませんね。
翌朝、訂正された書面を持って屋敷を訪れたのは、王太子府の書記官だった。
彼の持ってきた紙は完璧だった。ただ一行だけ、書いてはならないことが書かれていた。
書式しか信じてこなかった
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