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概要
槌を振れば鉄は跳ね、火が怖い。その子が、祖になった。
その男には、何もできない。鉄を打てない。槌を持てば鉄が跳ね、火が怖い。谷でいちばん、役に立たない子だった。
なのに、彼は、鉄の祖と呼ばれている。
古代出雲。砂鉄と木炭で鉄を生む、たたらの谷。鉄はそのまま国力である。鉄の出ない年は、冬に誰かが欠ける。そてつの生まれた谷には、二十四の炉があった。
ある夜、そてつは何気なく言った。
「上の谷の砂は、においが、つんとする」
当たった。当たってしまった。
周囲は、その一言を「炉の神の声」と読んだ。禁じられた白の谷への三歩は「神域を開いた功」になった。兄弟子が打った良鉄は「そてつが打った鉄」になった。そてつが黙れば、沈黙は「深慮」になった。
本人は、何もしていない。
「わしは、何もしていません」
そう言うほど、谷の者
なのに、彼は、鉄の祖と呼ばれている。
古代出雲。砂鉄と木炭で鉄を生む、たたらの谷。鉄はそのまま国力である。鉄の出ない年は、冬に誰かが欠ける。そてつの生まれた谷には、二十四の炉があった。
ある夜、そてつは何気なく言った。
「上の谷の砂は、においが、つんとする」
当たった。当たってしまった。
周囲は、その一言を「炉の神の声」と読んだ。禁じられた白の谷への三歩は「神域を開いた功」になった。兄弟子が打った良鉄は「そてつが打った鉄」になった。そてつが黙れば、沈黙は「深慮」になった。
本人は、何もしていない。
「わしは、何もしていません」
そう言うほど、谷の者
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