警察庁特別捜査官、久我総。
長身にロングコートを羽織り、無口で、性格も動作も常に低温の地味系である。
生活感がなく、書道の半紙のように、とらえどころのない男。
どうやらずっと独身らしい。
彼は捜査が終わったら脳が糖分を欲するままにスイーツを食べる。
凄惨な現場を見た後でよく食べることが出来るなと思うが、女子が喜びそうな甘いものを、店を探してまで口にする。
ラズベリー・ピューレを見て吐きそうになったりしないのだろうか。
特別捜査官である彼は、その異能をもって、警察組織に抱えられている。
どんな異能かというと、物の残留思念が見えるのだ。
そのまま説明するならば、犯行現場に落ちている遺留品から、物がその時に記憶していたものが、映像を再生するようにして彼には見える、ということになる。
この能力があればどんな難事件でも解決に結びつく。
監視カメラの死角からも特殊な方法で情報を吸い上げる久我は、特別捜査官として重宝されている。
被害者が死に向かうまでの経緯。
犯罪者があつかう凶器。
しかしこれは久我の脳に、殺害の様子や加害者の殺意、死者の無念が、事件の数だけ再生されることを意味している。
任意に選ばれる裁判員は刑事裁判で見聞きするものによって、戦場帰りのようなトラウマを抱えてしまうというが、あの状態がずっと続くのだ。
寄せては返す暗い思念は、久我の脳を少しずつ蝕む。
彼の前にある甘いものは、そんな疲れを一時的に麻痺させる麻薬なのだろう。
(本編)「異能者 Different from Others」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650981029047