第6話 告げる
「な、なぁ?」
何も答えない硲野に対し、ジャックは冷や汗をかきながら問う
対する硲野も動揺で冷や汗をかいていた
クライヴはバレるなと言っていた
理由は言わなくてもわかる
しかも、一番バレてはいけないやつらとの戦闘中にばれかけるというやばすぎイベントだ
「‥‥後で話します。今は戦いに集中しましょう。」
「あ、ああ…」
硲野は後で話すという約束をすることでその場をしのいだ
しかし、お互いの緊張は解けていない
そのため、ジャックに隙ができる
それを敵が見逃すはずもなく、ジャックに斬りかかり‥‥
「ストーンショット!」
間一髪で硲野が魔術を発動
敵は手首を負傷し、よろめく
そのすきを見逃さず、ジャックは敵を斬った
「助かったぜ、ありがとな。」
「どういたしまして。」
ようやく二人の緊張がほぐれた
「二人とも、何班を乱してるの!」
テトラが敵を切り倒しながらやってきた
ノレイルも遅れて後ろからきた
「すまん。」
「すまんじゃなくて、もう!」
「まぁまぁ、二人とも無事みたいだし、今回は許そうよ。」
「‥‥わかったわ。」
テトラがしぶしぶ承諾した
ジャックはバツが悪そうにしている
「それじゃ、終わらせようか。」
「「「了解」」」
◇
初陣は大勝利で終わった
死傷者は当初の予定の半分以下だった
もちろん騎士たちは浮足立っている
「今日は飲むぞ!」
「『今日も』だろ?」
「うるせぇ! がははは!」
勝利の凱旋で賑わう中、硲野は路地裏でジャックと密談をしていた
テトラたちはジャックが適当な理由をつけて居酒屋に向かわせた
「それじゃ、話してもらおうか。」
「‥‥はい。」
硲野はこの際、ごまかしたほうが面倒くさくなると考えた
クライヴ団長の許可は出ていない
というか、団長にもこのことは秘密にしている
一歩間違えれば自らの首を絞めることになる
そうなれば、ジャックを切り捨てなければならなくなる
それは異世界に来て、心細い硲野にとって耐えがたい苦痛であった
どうか、真実を知っても秘密にしてほしい
俺の仲間であり続けてほしい
つばを飲み込み、汗を滴らせ、足を震わせながら硲野は口を開いた
「実は、俺、俺は、不死身なんです。」
緊張のせいだろうか
めまいがする
焦点が定まらない
ジャックの表情が気になるけれど、見れない
見たくない
しばらく続く沈黙に硲野は耐えられなかった
やっとの思いで見上げた先には悩んでいるジャックの姿があった
だが、10秒ほどするとジャックはため息をつき、いつもの表情に戻った
「‥‥俺だけに話したのか?}
「はい。テトラさんたちには話していません。」
あえてクライヴたちが知っていることは伏せた
だが、テトラが知らないというのは本当だ
真実の中に嘘を混ぜる、生きていく上で必要な力でもある
「そうか、俺を信用してくれたんだな。‥‥ありがとう。」
ジャックもそのことを察しているようだったが深く聞いてこない
硲野にとってそれはありがたかった
「それで、このことは‥‥」
「分かってるよ。墓場まで持ってくよ。これでいいだろ?」
「‥‥いいんですか!?」
「言いふらしたっていいことないだろ。お前、知られたくないみたいだし。」
「ありがとうございます。」
「敬語はいいって言ったろ? これは男同士の秘密だ!」
硲野の背中をバンバンとたたきながらジャックは笑った
◇
第3騎士団 本部
「なぜですか! 連戦続きで兵が疲弊しています。それなのに‥‥」
「だから、負傷兵は参加させないと言っているだろ。それに、この任務にはおまえにもいってもらう。失った分はそれでリカバリーできる。」
「おかしいです、団長! 今回達成した反国教戦線討伐だって、ハザマノさんがここへきて急遽決めたことでしょう?」
レイナがクライヴに抗議している
実は今回の任務は硲野が騎士団に運ばれた時に決められたのだ
さきの盗賊団の討伐で疲弊しているにもかかわらず、だ
「それに、次の任務の日には‥‥」
「総騎士団長がお見えだろう? それがどうした。」
「例年なら特別な事情のない限り、全騎士団のメンバーをそろえなければならないはずですよ。監査にいらっしゃるのですから。」
「だからだよ。」
「何をわけのわからないことを!」
思わずレイナは剣に手をかける
だが、クライヴはそれを見てなお、淡々と続けた
「ここは第3騎士団、俺がリーダーだ。それに俺はお前とハザマノの二人は必ず行くようにと言っているだけだ。」
「中規模拠点にですよね!300人は必要ですが。」
「必要なら俺の直下兵を渡す。それでいいだろ。」
「それは‥‥」
何も言い返せずレイナは黙り込んだ
「それじゃ、下がって。」
クライヴの言葉に従い、黙ってレイナは部屋を出た
「クライヴ団長、どうしちゃったんだろう‥‥」
硲野が現れてから様子が変わった団長にレイナは不安を隠しきれなかった
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