第3話 協調性皆無の班
レイナに案内され、硲野は第3騎士団 レイナ分隊の訓練室までやってきた
随分と大きな建物だ
レイナは自分と同い年くらいに見えるのに幹部であることの方が驚きだが
「酷いよね、クライヴ団長も。新人を講習にも出さないで前線に向かわせるんだから。」
レイナが憐みの目を向ける
前線?どういうこと?
「それはいったい‥‥」
「私の分隊は第3騎士団で最も前線に駆り出される隊なの。だから死人がバンバン出ちゃうから、いつも人手不足で困っているからね。」
「そうですか、ははは‥‥」
死なない兵士を死者がたくさん出る戦場へ向かわせるというのは合理的ではあるが、人道的ではない
流石団長といったところか
冷徹な一面も備えている
「それじゃ、ハザマノに入ってもらう班を紹介するからついてきて!」
レイナの手招きで訓練場の裏まで案内された
建物の中には入らないのだろうか
警戒しながら歩いて行くと男女の争う声が聞こえてきた
「あんたが足引っ張るせいでリゼッタが死んだんじゃない!」
「お前が何も考えずに特攻するから班が乱れて死んだんだろ!」
「二人とも落ち着いてよ‥‥」
声のする方へ到着すると金髪緑目ののチャラそうな男と紺色の髪で黒の瞳の美少女が口喧嘩をしていた
そして、傍らには小柄な栗毛の少女が泣きそうな顔で二人を止めようとしていた
話の内容は誰のせいで死んだのかという物騒なものである
「だから!あんたが‥‥」
紺色の髪の美少女がレイナに気づき、顔を青くした
金髪のチャラ男も栗毛の少女も気づき、冷や汗を流す
「「「お疲れ様です!レイナ隊長!」」」
三人は先ほどまでの争いが嘘であったかのように声をそろえ挨拶をした
「お疲れさま。また喧嘩してるみたいだね。」
「そうなんですよ!聞いてください! こいつが‥‥」
「とりあえず、黙ろっか?」
レイナがチャラ男の言葉を笑顔で止めた
笑顔だが目が笑っていない
横にいる硲野は思わずちびりかけた
3人が黙ったところでレイナは咳ばらいをし、硲野を紹介した
「今日から君たちの班に入ってもらう、ハザマノ・トオル君です。仲良くするように!」
「硲野です。よろしくお願いします!」
硲野は斜め45度の角度で礼をした
実に綺麗なお辞儀である
初対面で人に与える印象が一番大きいと知っているので、真面目君を装うと思ったのだ
「変な名前だな。」
「弱そうね。」
「また死にそう‥‥」
意味がなかったようだ
3人からは散々な評価である
「それじゃ、仲良くね。」
そう言ってレイナは去っていった
「え?待ってください!」
硲野の呼びかけもむなしく、すぐにレイナは見えなくなった
「あの‥‥」
「まぁいいわ。私たちも自己紹介しましょ。」
「そうだな。」
「ですね。」
彼らによると紺色の髪の美少女の名は『テトラ・ブロード』
チャラ男は『ジャック・ノール』
栗毛の少女は『ノレイル・シャロン』
意外なことにノレイルが班長らしい
いや、他二人の自己中なところを見れば当然だと硲野は思った
「じゃ、魔法戦から始めるか。」
ジャックの発言にノレイルたちは賛同する
「魔法戦?」
「は?もしかしてお前、魔法使えないのか?」
当然のことである
硲野は異世界に来たばかり
字も読めなければ、魔法も使えない
使い方すらわからない
魔法の存在自体、クライヴの発言で知ったばかりなのだ
「はい‥‥」
「マジかよ。また死ぬぜ。」
「そうね。」
「少しくらいは魔法について教えましょうよ‥‥」
ノレイルがジャックとテトラをなだめ、魔法について教えてくれた
魔法は火、水、風、土、雷の5属性が基本でそれに加えて神聖魔法と闇魔法があるらしい
王道な組み合わせで硲野は安心した
回復魔法は神聖魔法の中にあるらしい
魔法の階級は7段階あるらしいがお前はどうせ使えないから知らなくてもいいそうだ
酷い
それでもなにも使えないのはいけないそうなので、使い勝手の良い、風属性と土属性の初級魔法を教えてもらった
「風属性の初級魔法で君が使えそうなのは‥‥ウィンドカッターかな。攻撃力はあまりないけど避けないとけがはするから場しのぎくらいの用途なら役立ちます。」
魔法を指導してくれるのはノレイルだけ
ジャックたちは二人で勝手に模擬戦をしていた
本当に大丈夫か、このチームと硲野は思わざるを得なかった
魔法には詠唱などはなく、イメージが大切らしい
風でものを切り裂くイメージだ
「ウィンドカッター!」
思ったより簡単で一発で成功した
初級魔法くらいなら子供でもできるらしい
それを聞いて泣けてきた
自分には魔法の才能が!?と一瞬思ってしまったからだ
同じ要領で土の初級魔法『ストーンショット』も習得し、魔法講座は終わった
「貴方の話を聞く限り、剣術もまともにできないようですが、もう日も落ちてきたし、今日はお開きにしましょう。」
ノレイルさんの合図で何時間も模擬戦をし続けていたジャック達もこちらへやってきた
「魔法、少しでも使えるようになったのか?」
「はい。」
「ノレイルの指導、下手でしょ。」
「そんなことはないですよ。」
「もう、テトラさん、私にあたり強いですっ!」
癖が強く、まとまりがない
そんな班だけれど硲野はどこか心地よさを感じていた
この班で過ごす時間はそう遠くないうちに終わるとも知らずに
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
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