第21話 いつもの店の、特別な皿
街の復旧には、何日もかかった。
俺たちも石を運び、折れた戸板を外し、戻れない人へ荷物を届けた。
戦闘が終わった後の仕事の方が、手にまめができた。
一週間後、ギルドへ呼ばれた。
鎧角竜の討伐と避難誘導を評価され、俺とセナはA級へ、ミアはB級へ昇格した。
ミアの治療と結界については、助かった人たちから何通も報告が届いていたという。
「私の分までちゃんと見てたんだね」
新しい牌を見て、ミアは少し照れたように笑った。
報奨金の袋は、俺が持っていた採取籠より重かった。
家を買い取る話をすると、二人とも反対しなかった。
大家に相談し、残りを修繕費として取っておく。
契約を終えた帰り、俺はいつも払っていた家賃の袋を持っていた。今日は、それを渡さずに帰れる。
「もう、いらないのか」
「修理のお金は要るわよ。でも、ここに住むために毎月払わなくていいの」
セナは家の玄関を開け、壁へ手を当てた。
「私、ここへ棚を付けたい」
「穴を開けていいのか」
「私たちの壁でしょう?」
翌朝、俺は休みの札を出して、板と金具を買いに行った。
セナが高さを決め、俺が釘を打つ。二本目が曲がって、彼女が笑った。俺も笑って打ち直した。
今までなら、その時間で薬草を採りに行っていた。
昼には、彼女の部品箱が新しい棚へ並んだ。食卓の端が少し広くなる。
ミアが空いた場所へ自分の杯を置き、向こうへずらした。
「ここ、使っていい?」
「もちろん」
俺は金槌を下ろした。
窓の外が明るい。仕事を休んでいても、焦らずに昼飯を待てた。
その夜、いつもの食堂へ入った。
奥の席に、料理がすでに並んでいた。
「今日は選べないよ。こっちが食べさせたいものを作ったから」
大きな肉の皿。焼いた魚。野菜の煮込み。
セナの前には、丸ごとのりんごのパイ。
ミアには香草の利いた包み焼きが置かれた。
俺が財布を出すと、おかみが手で止めた。
「今日は店から。明日からはちゃんともらう」
俺は財布をしまった。
「ありがとうございます」
窓の外を通る人が、こちらへ手を振った。
俺が振り返すと、その人は隣の人に何か話して笑った。
耳を使わなくても、自分の名を呼んだことは分かった。
セナが俺の腕へ手を絡めた。
人前だったが、今度は驚かなかった。
「冷めるわよ、カイル」
俺は彼女の方へ顔を向け、笑った。
ナイフを肉へ入れる。
今日は、次の家賃を考えずに食べられた。
* * *
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
「面白かった」「続きも読みたい」と思っていただけましたら、★で応援していただけると、とても励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます