陽が降る日に〈2〉
えゝ……皆さんは……であり、この世の……存在であります。この学校……学んで……えー、この……であり、皆さんは……であります。……ということでもあります。最後に……は……の……であり、……の……でもあるということであります。先人の言葉を借りるなら……とでも言いましょうか。最後に……であったり……出会ったりもするので、皆さんは注意してください。……ということは……でもあります。決して……せぬよう、細心の注意を払うとともに、……してください。最後に人生とは、……であり、……であります。最後に、長くなりましたが、これを私からの言葉とします。
人々を夢の中へと誘い込む魔術の練り込まれた言葉群は、私たちの耳に入り、もう片方から出て行った。教授たちは感銘を受けて眉間に皺を寄せて(皺がありすぎて誤差なのかもしれないけれど)肯いていた。
周りの人たちはカサカサに乾燥した私を好奇の目で見るだけで、決して話しかけてこず、小学校生活の初日は明らかな失敗に終わった。
どうしてこんな日に限って、陽が降って、道を間違えて、捨てガメに出会うんだ。そんな風に落胆して日陰の下のベンチに座っていると、校門から外へ出ていく幾つかの集団が目に入る。
もう、仲良くなったのか。一抹の焦りと不安の心地であったものの、すぐに奴らがすでに顔見知りである可能性を見出して、それらの心地を拭おうと試みる。
折角遠くの小学校に来たのにな。環境を変えても孤独が変わらぬ身辺を自分で憐れんでいると、暖かな空気に侵されたベンチの右端に座る私の反対、左端に誰かが座ったことを察知する。
ちらりと目玉だけ誰かの方を向くと、そこにはカッターシャツに紺のネクタイをした女性。手提げかばんは幾らか膨らんでいてズボンと同じ色の上着を入れていることが推測できる。
髪は後ろで束ねて背の中間辺りを終わりとして垂らしている。手には黒い傘。総括して葬式に出席するかと邪推してしまいそうなほど、キチッと締まっていた。フォーマルという言葉の象徴。神の最初の作品のようであった。
「ちょっと茉莉~⁉探したよ~⁉」
金城鉄壁の如き守りの雰囲気をいとも容易く打ち破ったのは、誰かの後ろからの言葉の矢。そして、太陽のような笑顔の女は、私の隣のフォーマルの象徴に抱き着いて、頬にキスしてしまいそうなほど接する。
「ああ、ごめん。はぐれたから、動かない方が良いかなって」
その声はまるで
そうして、凪を喉に飼う者は立ち上がり、傘を差して太陽と共に去っていった。私は左端に手を置いて彼女の温もりを感じたいという、この世のものとは思えない暴挙を心に浮かせて、直ぐに沈めた。
アア、あの人らも俺の陰口言ってんのかなァ。そうして私は四肢を全て放り出したい心地になる。
ふと、私は石の灰色に溶け込まない、純白の正方形が浮かび上がるのを知覚する。それは幻覚ではない。あきらかな灰の上の白。
私は尻を擦って左端へと動く。そこには伏せられた10㎝四方にも満たない小さな紙きれであった。
あの茉莉ってひとがおいてったのかな。そうして、何も考えずに私は紙を取り上げて観察する。片面は純白が隅々まで広がっていた。そして、もう片面に、
『話したいことがあります。陽を浴びる人。
今日の70時に、
住所は***‐***‐***』
とあった。
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